
「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎著(東京創元社、初版:2012年5月30日)
最近、伊坂幸太郎が面白くて、10冊ほど立て続けに読んでいた。
そんな折り、
“破格の小説をお届けします”
“ジャンル分け不要不可、渾身の傑作”
“伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。”
のキャッチコピーのもとに発売されたので、伊坂幸太郎への期待感を持って飛びついて読んだ。
ところが期待に反して、いささか拍子抜けをする作品であった。
人は物事への先入観、思い込みにより生活しており、それをリードしている者の怖さ、洗脳する者と知らないままされる者の主従関係が描かれている。
しかし、前半は、ダラダラとして描かれた背景が続き、何度止めようかと思ったことか。
それを我慢して読んでいると、最後の数十頁でやっと読み進む楽しさを味わうことが出来た。
彼が後書きで書いている大江健三郎の「同時代ゲーム」を読んだ体験、即ち、
「振り落とされないためにしがみつくようにして、必死に読み進めた読書体験」
を体験させられた作品であった。