目の前にいる人を「あなた」と呼ぶ。
「あなた」はあちらのほうという意味で、本来は方向を指す言葉だった。
私に対して、違う方向にいる方なので、「あなた」なのである。
妻が夫のことを「あなた」と呼ぶのは、江戸時代からである。
夫といつも離れた位置にいて、表面に出なかった江戸時代の妻たちは、夫を「あなたの人」と表現していた。
恋愛中、彼のことを「あなた」とはあまり呼ばないのではないか。
結婚してから「あなた」と呼ぶようになるのではないか。
恋愛中は近くにいたのに、結婚すれば離れた存在になるのであろうか。