
【 えたいの知れない不吉な塊(かたまり)が私の心を始終圧(おさ)えつけていた。焦燥(しょうそう)といおうか、嫌悪(けんお)といおうかー 】
こんな書き出しで始まる、明治の作家梶井基次郎の小説 『檸檬(レモン)』 。
いわゆる鬱(うつ)状態の〈私〉が、街を歩いていた時、果物屋の店頭に並べてあった檸檬が目に留まり、一つ買った。
レモンイエロウの絵具をチューブからしぼり出して固めたようなあの単純な色、それからあの丈の詰まった紡錘形(ぼうすいけい)の格好をした檸檬。
その檸檬は、手の中でたとえようもなく良かった。
その色、形、冷たさ、匂い、肌触り、そして重さがしっくりとくる。
そのすべてが、〈私〉を落ち着かせてくれる。
五感を満足させてくれる。
元気づけてくれる。
とるにたらない檸檬を無情のものと感じる感覚は、内なる存在たる自分にとって、心地よい感覚であるのですね。
イライラしてる時、落ち込んでいる時、淋しい時、悲しい時、独りぼっかなって感じた時、etc. 檸檬を手のひらに乗せてみてください。
さぁ、五感をいっぱい使って感じてください。
重さ、色、形、匂い、そしてその冷たい肌触りを。
感じてみて下さい、スピリチュアル(深い意識)の世界を。
そして、手榴弾のように投げてみましょう!・・・・・( 笑 )