
「人間って、絶対に他人のために泣いたりできないんだって。
誰かが死んで、それで悲しくなって泣いてても、それは結局、その人がいなくなっちゃった自分のことがかわいそうで泣いてるんだって。
自分のためにしか涙が出ないんだって。」(『ぼくのメジャースプーン』辻本深月著)
私達は、本当に人の悲しみを分かることが出来るのだろうか。
もし本当に分かることができ、身代わりになることが出来るなら、本当の愛(慈悲)なのでしょう。
しかし、どう足掻(あが)いても、到底なることが出来ない悲しさを抱えてきている自分があるのです。
人の苦しみ悲しむのを見て、それを何とかしたいと自らも苦しみ悲しむ。
誰でもその苦しみ悲しみの軽減を願うのは、人情の極みでもあります。
しかし限界を知らされ、挫折し、辛く苦しい思いを持ち続けざるを得ない。
そんな悲しい存在が、人間なのでしょう。