「遠い太古、男は野に出て狩りをし、女は巣にこもって子供を育てた。

したがって男はもっぱら山野において思索をし、女性は洞窟のほの暗い闇中で、あれやこれやと物を考えたのである。

女は考え深い。

男の思索は状況が強要するが、女は自らすすんで考える。

星も読まず、風も識(し)らず、光すら届かぬ闇にぽつねんと座して、女は考え続ける。

だからこそ、亭主の浮気はバレやすく、女房の浮気はバレにくい。」


浅田次郎著『オー・マイ・ガアッ!』より