諦める(あきらかにみる)


あるところに、ヘビがいました。
ヘビは、川を渡りたいと思いました。

ただ、自分では泳げません。
そのため、船を漕いでいた船頭に頼みました。

ヘビ 「船に乗せてください」
船頭 「いやいや、ダメだよ。だってキミ、ヘビじゃん。噛むでしょ? 毒あるでしょ?」
ヘビ 「そんなこと、絶対にしません! 約束します!考えてみてください! もし私があなたのことを噛んでしまったら、あなたが死んでしまうわけで、船を操縦する人はいなくなります。そうなったら、私だって川の真ん中で動けなくなり、干からびて死んでしまいます! だから、噛むワケないじゃないですか!」
船頭 「なるほど、確かにそうだ。そこまで言うのなら…」

そして彼は、ヘビを船に乗せてあげました。
さて、船は少しずつ川岸から離れ、川の真ん中にさしかかりました。

「さーて、そろそろ半分だな。あと少しで向こう岸につくぞ…」
そう言いながら船頭が見ると、ヘビがムズムズしています。
「え、どうした? おい?」
「噛みたい」
「オイ? オ、オイ?」
「噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい」
「は? ………ってオイ、オイ! ちょ、待て! ちょっ…!!」
ヘビは、船頭を噛んでしまいました。
当然、船頭は死にます。
そしてもっと当然ですが、船は動くことができず、ヘビも干からびて死んでしまいました。


これが、船頭とヘビの話です。
この話、どう思いますでしょうか。
なぜヘビは、すべてが分かっていたのに、噛んじゃったと思いますか?
答えはシンプルですね。

「だって、ヘビだから。」


◆ サソリさんは。

実はこれに似た話は、アラブにもあります。
砂漠で水に渇いたサソリは、通りがかったラクダに頼みました。
サソリ「オ、オアシスまで運んでいってくれ」
ラクダ「イヤだよ。だってキミ、刺すじゃん。そしたら、死ぬじゃん」
サソリ「いやいや! 刺してキミが死んだら、僕も動けなくて死ぬから! そんくらい分かってるから!」
ラクダ「そう言われてみれば、そうだね。じゃあ、乗りなよ」
もうこの先は言うまでもありません。
砂漠の真ん中で、ブスッ。ギャア。
ラクダは死に、もちろんそのまま、サソリも干からびて死にました。
なぜサソリは、すべてが分かっていたのに、刺してしまったと思いますか?

答えはシンプルですね。
「だって、サソリだから。」



コメントへ!