(趣味でフルートを吹いています。吹き方についていろいろ試行錯誤したこと、その時々の思いなどを書いてきました。これをごらんになった方でもし何かお気付きの点、アドバイスなどありましたらコメントお願いします<2024/06/19

 最終更新>)

 

 

1.エアリードの仕組み
フルートはエアリードによって音が出ると言われています。YAMAHAによるYouTube動画でエアリードの動きを説明しているものがありました。

 

【フルート】フルートの発音原理 - YouTube

   (  https://www.youtube.com/watch?v=_8JGCKSnD8s )

 

※YAMAHAによるYouTube動画なのですが、このブログ内に動画を貼ることができません。限定公開に指定してあるとのことなので個々に検索してほしいそうです。

動画冒頭の唇から出た息の上下運動はよく言われる“カルマン渦”(動画中には記入されていませんが)によって引き起こされる現象のようです。息の流れが歌口のエッジに当たると渦が生じてエッジの外側・内側に交互に流れるのだそうです。

Wikipediaによるとこのカルマン渦の流れは障害物に当たると振動とそれに伴う音を引き起こすとのことで、これをフルート族に置き換えると、エアリード=発振・発音源になっていると考えられます。

 

        カルマン渦 - Wikipedia (参考 Wikipedia「カルマン渦」)

 

この「障害物に当たると振動とそれに伴う音を引き起こす」例としてよく挙げられるのが電線の風音です。風の強さに応じてビュービュー鳴る音の高さが変化します。さらに身近な例は縄跳びの風音です。縄跳びで1重跳び→2重跳び→3重跳びのようにスピードが加わるに従って音の高さが変化します。

 

瓶(びん)の入り口に息を吹きかけて音を鳴らすのも同様の例ですが音の高さを変えるには練習が必要になります。虎落笛(もがりぶえ)の例は古くから挙げられていますが、竹垣に風が当たる現象はこの頃ではあまり見かけなくなってきました。

 

フルートは息を「エッジの外側・内側」の両方に吹き分けて音を生み出すわけです。息そのものは透明で見えないけれど、上の動画のようにエッジ付近で息ビームが上下に細かく振動しているのが分かると、他の木管楽器のリードとかなり似ているような気がしてきます。もっとも、フルートの息は半分が外へ捨てられてしまいますが・・・。

 

外側に捨てる息がもったいないなどと思うこともありますが、この外側に流れる息を止めると音が出なくなることも知られています。よく挙げられるのがフルートを吹きながら扇風機の前に来ると音が出なくなるという例です。また、吹いている最中にエッジの向こう側に指を当てると音が止まってしまいます。つまり必要ないから捨てているのではなくて必要だから捨てているという世にも珍しい現象!?が起こっているわけです。

 

2.息のスピードを反映した音
動画の8秒からは、シの音の振動数と空気の圧力の変化が示されています。五線内のシは約500回、そのオクターブ上は約1000回と示されていますが、エアリード(カルマン渦)はこの回数だけ振動しているのだそうです。当然ながら音程の上下にともなって息のスピードも物理法則に従って変えなければならないわけです。

カルマン渦は息が遅くても速すぎても出来ないのだそうで、ときどき息のスピードが足りなかったり、逆についつい強く吹きすぎたりして、音がひっくり返ったり、音が鳴らなかったりしたこともあったことを思い出します。ただし、この息のスピードを意図的に微妙に遅くしたり速くしたり(いわゆる暖かい息、冷たい息という吹き分け)して音色をコントロールする方法もあります。

 

息のスピードのコントロールの練習としてハーモニクスの練習(HARMONICS: flute TUTORIAL (youtube.com))をしていますが、最低音から最高音まで移動が自由になればなるほど音色や音の跳躍が安定してきました。この練習をしてからモイーズの「ソノリテについて」を始めると以前よりやりやすくなりました。特に息のスピードをコントロールするとき、息の支えと唇の柔軟性の必要性を実感しています。

 

かのゴールウェイは「ソノリテ」を練習する目的について「どんな音がきても自動的に、そして意識的な努力なしに、唇がそれに合った形になるように、特にその感じを覚えこませることが皆さんの目的でなければなりません」(『フルートを語る』吉田雅夫訳)と述べていました。つまり、すべての音それぞれに必要な息のスピードとアンブシュア・アパチュアがあるということ、それを「ソノリテ」などの練習を通して体に覚え込ませなさい、ということのようです。

 

また、最適なポイントに有効な息ビームを当てるためには、モイーズが「ソノリテについて」の中で繰り返し強調している唇の柔軟性が必須で、唇が硬くなってしまうと息のビームがまとまらなくなって散ってしまい、密度感のある音が出なくなってしまうようです(流体の出口が固いと物理学でいうところの「回折の原理」が働いて息のビームが出口で散ってしまうこと)。


つまり、モイーズが言うように唇の柔軟性を保った上で、ゴールウェイが言うように唇をコントロールしながら、息の支えに基づいた息のスピードコントロールも自由自在に調節できるようになるのがフルートを鳴らす上で必要なことだということなのでしょう。

3.共鳴するということ
楽器がよく響いているとき、“楽器が鳴っている”という言い方をされます。楽器によっては“胴鳴りしている”とか“身鳴りしている”とも言われます。バイオリンやギター、ピアノなど弦の振動を楽器に共鳴させる仕組み(響板・魂柱など)が作られているし、木管楽器もリードを発音・発振源として管内の空気柱と管自体とが共鳴・共振しています。

 

唯一リードを持たないフルートもエアリードのカルマン渦の働きで頭部管が振動し音を発すると共に管内の空気柱も共鳴・振動し(「共鳴波」と呼ばれる)、それによって楽器本体も共鳴・振動していることがわかります。

初心者の練習として頭部管だけで音を出す練習がありますが、例のピーという音は結構な音量がありますし、頭部管自体の振動が手に伝わってきます。さらに胴部管、足部管を接続して吹いてみると、フルート本体のキーが振動しているのも分かります。

 

フルートの材質も金・銀・洋銀・木(黒檀ほか)によって音色に違いが出ますし、用途や好みによって使い分けられていますが、これはフルート本体がそれぞれの材質固有の振動をしているからに他なりません。

 

また、パッドの中に樹脂や金属を組み込んで共振させる仕組みは以前からありました。さらに最近使われ出した「フルート・スピード」「リーフレック」「バランス・キャップ」のような音響補強パーツはフルート自体の振動をさらに共振させて倍音を補強していると考えられます。これらは楽器本体の振動なしには成り立ちません。

 

4.身体も共鳴している?
楽器を共鳴させるといえば、楽器そのものはもちろん、さらには演奏者の身体も楽器の一部としてきたようです。かのゴールウェイは「豊かな音」を作り出すために「重要な要素は口の内部・・空洞を意識しましょう・・・よい音を作るのに必要な隙間です」「胸も開いていなければなりません・・喉と胸を広げていると、身体全体が響板になってフルートを助けます。」(『フルートを語る』吉田雅夫訳)と述べています。

身体を響かせるというのは声楽に通じるような話ですが、管楽器奏者の中には「軟口蓋を開けて頭蓋骨で響かせなさい」とか「鎖骨や胸骨にも響かせるべき」、「超高音は歯、中・高音は頭蓋骨・鼻骨・喉仏、低音は胸骨・肋骨・骨盤に響かせよ」とかなり具体的なアドバイスをしている人もいます。

 

私自身「軟口蓋を開けて・・・」と「低音は胸骨・・・」というのは実感があって、それぞれの倍音が感じらるとき楽器がよく鳴っているように思えてきます。逆に今日は楽器の響きがよくないなというとき、自分の体の使い方・響かせ方を忘れていたりおろそかにしていることが多いことに気付きました。

 

楽器、特に管楽器は発音体とそれに共鳴した空気柱と楽器本体、さらに人の身体が共鳴しあって鳴り響いているということでしょう。その上で、演奏している室内や音楽ホールも共鳴して楽器の音をさらに豊かにしてくれているようです。音の反響の特徴も関係しますが、それとは別に部屋の壁や天井の形状や材質、経年変化などで音色が違ってきこえるのも不思議ですし興味深いところです。                                         

 

5.楽器を鳴らすこと

私は調整の必要があるとき自分の楽器を作ってくれた方(かのランパルが生前、日本に来たときこの楽器製作工房によく訪ねて来ていました。私の楽器<18K+14K>が出来上がったときたまたまランパルが来訪していて、試奏までしてくれ「良い楽器だ」と言ってくれました)のところへ行きますが、調整後に私が試奏するとよくダメだしされて「○○さん、それは息の音ですよ!」と言われてしまいます。

 

フルートは息を使って音を出すのは分かりきったことですが、この制作者の方が言いたいのは”楽器本体を鳴らすように息を使えばもっと良い音が出るはずですよ”ということのようです。

 

私は時々フルートを始めた頃の初心者用の楽器を出して吹いてみることにしています。どれくらい音が改善・進歩しているかを知るために必要だと思っているからです。かつて出せなかった音色で吹けるようになったとか、この楽器はこんな音が出せる楽器だったんだと分かるようになったとか、そのつど発見の喜びがあります。

 

それはおそらく吹き方次第で楽器はいろんな深みと味わいある音を出してくれる無限の(!?)可能性を持っているのだと教えてくれているのだと思います。そういう意味で楽器を鳴らす楽しみはこれからも続きますし、より良い音を目指す励みにもなっています。

 

うちの猫がタワーで遊んでいるとき(生後5ヶ月位のころ)の写真です。