趣味のフルート、思うことあれこれ(趣味でフルートを吹いています。吹き方についていろいろ試行錯誤してきたこと、その時々の思いなどを折りに触れて書き加えてきたものです。もし何かお気付きの点、アドバイスなどありましたらお願いします<2024/05/07 最終更新>)

 

 

第3部 アタックと音の連結

 

ムリっぽい
 課題4の三連符の複雑で長い連なりを初めて見たときは「むずかしい、これはムリっぽい」というのが正直なところでした。それでも「自分に役立ってくれる部分が少しでもあるかどうか確かめてみよう」という好奇心で部分的にでもトライしてみることにしたわけです。

予備練習
 特に低音部からいきなり高音部へ、あるいはその逆というように離れた音へと跳躍するときは息のスピードを瞬時にコントロールしないと音ミスしやすいので、第3部に取りかかる前に自分なりの予備練習法を探してみました。
 

 一つはハーモニクスの練習で、最低音ド↔低音ド↔中音ソ↔高音ド↔高音ミ↔高音ソ↔高音シ♭↔最高音ド(これはまだ出せません)など何回か往復してみます。参考にしたのはエミリーバイノンのYouTube動画「フルートチュートリアル ハーモニクス」

HARMONICS: flute TUTORIAL - YouTube です。息のスピードを変化させる練習にしています。

 

 もう一つは実音で最低音ド↔低音ド↔中音ド↔最高音ドのように実音で低音部↔中音部↔高音部の3オクターブ間の移動練習をすべての音について吹いてみます。何回か往復して音が安定してから課題に取り組みます。チューナーやメトロノームを使って音程やテンポを確認します。息のスピードコントロールが素早くできているかどうかチェックします。

「アタック」の効果
 課題1の「アタック」というのは「舌を外に出して、ヴィブラートをつけたピッツィカートのようなしっかりした音」なのだそうです。八分音符であっても「音が最小限の時間に最大の生命を持つように」吹くように指示が書かれています。

 

 これはかなり難しいのですが、舌を外に出してタンギングして、お腹も意識しながら口の中の圧力をプラスして上唇の裏側に息を当て、気持ちだけでもヴィブラートをかけるように吹くとけっこうしっかりした音が出てきます。部屋の壁で跳ね返ってくる音が普段より大きめに聞こえてきます。

 

 「ヴィブラートをつけたピッツィカートのようなしっかりした音」をかけなさいという指示はおそらくお腹の支えや口内圧力を十分に生かすようにしなさいということかと思います。モイーズの理想とする音「フルトーン」(『モイーズとの対話』高橋利夫著)を目指す第一歩の練習なのかもしれません。

 

 この舌を外に出してタンギングする方法は「スピッティング=舌先の小さい種を勢いよく吹き飛ばすような動作(『モイーズとの対話』高橋利夫著)」と呼ばれ、演奏の中で使われることはあまりないとのことですが、音作りする上で様々な効果をもたらしてくれるようです。私が実感したことを以下に書いてみたいと思います。

 

その1 振動と遠鳴り
 音を出している時は楽器のキーに載せている指に振動を感じますが、このアタックの時の振動もやはり普段より大きめの振動です。このアタックの狙いは楽器そのものを良く響かせることにあるのではないかと思えてきます。いわゆる「楽器を十分に鳴らす」とか「楽器が身鳴りする」ことが「遠鳴り」に結びついているように思います。

 

 このスピッティングをするとき舌を引く直前に口内圧力が高まりますが、これが息ビームのスピードを生み出してくれているのがわかりますし、この口内圧力は息の支えによる圧力が加わるとさらに有効に働いて音が生き生きしてくるように思います。オクターブ移動はもちろん、楽器の振動を生み出して倍音が出やすくなるようで、響き・音の輝きが増し、遠鳴りをさらに有効にしてくれている実感があります。

 

その2 粘膜のトンネル 

 舌によってわずかに開かれた上下唇のやわらかな粘膜を息ビームが通るので息がよくまとまります。モイーズはこの『ソノリテについて』の中でしばしば「唇の柔軟性」ということを繰り返し強調しています。この唇の柔らかさを生かすことが良い音・響きを作るポイントのように思います。

 

 アタックで舌を引くと同時に上下唇は閉じようとしますが、息のビームによって外側に押しのけられて上下唇は粘膜のトンネルを作ります。これがモイーズのいう「なめらかな気柱」(第4部)を作って「豊かな音」(同)を生み出しているようです。仮に硬く閉じられた唇の間を通すと、物理学で言う回折の原理で息が散ってしまい有効な息ビームを作れません。

 

その3 アパチュアの調整  

 アパチュアをどのように作ればいいか分からないとき、このスピッティングによって出来た粘膜のトンネルを基準にして考えるようにしています。普段の練習の初めに音出しをしますが、スピッティングで楽器を鳴らしながらアパチュアの大きさを覚えます。その後スピッティングやタンギングなしで音出しの練習をしてなめらかな発音が出来るようにします。

 

その4 なめらかな音のつながりと安定した音色
 課題2・3はアタックののちにデクレシェンドしながら離れた音へ跳躍する課題です。ねらいとして離れた音へなめらかに移動できるようにすることだと書いてあります。移動する際に他の音や雑音などが出ないようにとも書かれています。

 

 運指の正確さを目的の練習でもありますが、さらには息の圧力やスピードを正確にコントロールして離れた音でも安定した音色で響かせるという、とても重要な練習だと思います。

 

 特に高音部↔低音部相互の跳躍の際にアパチュアを締めがちになってしまうのですが、音色がきつくなったり音ミスを起こしてしまいがちになります。常に唇の柔軟性を保つ訓練になっているのだと思います。

 

音を磨く鏡?
 時々、音符を追っていくのに気をとられたり、徐々に疲れてきたりで柔軟なアンブシュアとか息のスピードのコントロールをつい忘れてしまいがちになってしまいます。音が汚い時や音がひっくり返ったりしたときにハッと我に返って自分の状態をチェックして修正しています。そういう意味では自分にとって「ソノリテ」は自己点検しながら音を磨くことのできる鏡のような存在なのかなと思っています。
                                                                   (その3に続きます)