NHKの朝の連続ドラマ『春よ来い』(1994年放送 安田成美・中田喜子主演、橋田壽賀子脚本)のテーマ曲を松任谷由実が作詞・作曲しました。そのフルート編曲版を上野星矢が演奏しています。

心がくじけそうになったときふと思い出す曲です。歌詞を見返してみました。

  淡き光立つ にわか雨

  いとし面影の 沈丁花

  あふるる涙の蕾から

  ひとつ ひとつ 香り始める・・・

松任谷由実(ユーミン)の歌詞は美大で学んだこともあってか絵画的であると言われています。しかも美しい風景の中に切々とした心情もちりばめられています。

  君に預けし我が心は

  今でも返事を待っています

  春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まるとき

  夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く

上野星矢の美しい音色と繊細な表現に、歌詞の中の美しい風景や沈丁花の甘い香り、そして“春”が来るのを信じてひたすら待ち続ける主人公の心情が見えてくるようです。

ユーミンのオリジナルでは後半に童謡「春よ来い」が入ります。私の知人はこれは「純粋な祈りの心だと思う」と言っていました。

フルート用の編曲ではこれを入れない例もありますが、上野さんはあえて入れています。素朴な童謡の一節ですが、むしろそれだからこそ「純粋な祈りの心」を感じさせている気がします。

 

厳しい寒さの中にあってもかぐわしい香りを放ちながら咲いている沈丁花の姿は、君を信じて祈るように待っている心と重なっているのでしょう。それゆえ、“つらい冬の季節”を耐えて乗り越えようとしている人たちの共感を呼んでいる気がします。

 

 

我が家の庭に沈丁花が咲き始めました

寒い季節の中でとても良い香りを放っています