親父シリーズ外伝:知りたかったこんなこと

人間、生きていると「なぜ小学校であれを教えてくれなかったのか」と思うことが山ほどある。
「円の面積」より「財布にお金がない時の言い訳」。
「三角比」より「カップ焼きそばのお湯を流すときに麺を一緒に流さない方法」。

――こういうことの方が、よっぽど人生に役立つじゃないか!

そして我が家の親父もまた、知りたかったけど誰も教えてくれなかった人生の知恵に翻弄された男である。

■親父が知りたかったこと① 「なぜ酒は次の日に裏切るのか」

親父は晩酌が大好きだった。
ビール、日本酒、焼酎――もはや冷蔵庫は酒の方が野菜より多いレベル。

飲んでいるときは上機嫌で、鼻歌交じりに「ワシは世界一健康や!」と叫んでいた。
だが翌朝には頭を押さえ、こうつぶやくのだ。

「なんで酒は寝ると性格変わるんや…?」

――それを私に聞くな。

「昨夜はワシの味方やったのに、今朝は敵や」
そう言いながら味噌汁をすする親父。

教科書に「酒は人を裏切る」と太字で書いておいてほしかった。

■親父が知りたかったこと② 「なぜ焼肉は永遠に食えないのか」

焼肉屋に行くと、親父は毎回張り切ってこう言った。

「今日は無限に食う!」

だが20分後、タンとカルビで胃が限界に到達し、焼き網の前でうずくまっていた。
隣で元気に追加注文する私を見て、悔しそうに言う。

「若い頃は肉が呼吸みたいに入ったんや…」

――そんな酸素ボンベみたいに食べてたら死ぬぞ。

親父は最後に一言。
「焼肉は無限じゃない。有限や」

人生哲学みたいに言うな。

■親父が知りたかったこと③ 「なぜダイエットは1日で結果が出ないのか」

ある日、親父は突然スクワットを始めた。
「若返る!」と叫びながら10回。

そして次の日。
「なんでワシ、まだ痩せてへんのや」

――いや、1日で腹が割れたら日本中がボディビルダーや。

親父はぶつぶつ言いながらポテチを食べ始め、結局「スクワットよりポテチの方が効果ある」という謎の理論を編み出していた。
それ、誰も研究結果出してないから。

■親父が知りたかったこと④ 「なぜ機械は親父を嫌うのか」

家電に触ると、必ず壊す。
親父がビデオデッキに録画予約をしようとすれば――録画ボタンではなくイジェクトボタンを連打。
テレビを直そうと叩けば――叩いた瞬間に完全沈黙。

母はため息をついてこう言った。
「あなた、機械に嫌われてるのよ」

すると親父は憤慨しながらこう返す。
「機械はワシの反抗期や!」

――いや、それはお前の指がポンコツなだけ。

■親父が知りたかったこと⑤ 「なぜ母のカラオケは100点で、自分は58点なのか」

親父はカラオケで演歌を歌うのが大好きだった。
だが機械採点をすると、毎回58点くらい。
母が同じ曲を歌うと100点。

親父は顔を真っ赤にして叫んだ。
「なんでや!ワシの方が魂込めてるやろ!」

――いや、魂がこもりすぎて音程がどっか行ってるんや。

最終的に親父はマイクを置き、テーブルを叩いて言った。
「この採点機はワシを恐れている!」

――採点機ごときにビビられる親父、嫌すぎる。

■親父が知りたかったこと⑥ 「なぜ人は死ぬのか」

そして最後に。
親父は50歳で亡くなった。

私がまだ若かった頃、親父がふと漏らしたことがある。
「死んだらどうなるんやろな。酒飲めるんやろか」

――人生最後まで、酒かい。

でも、今は思う。
天国で酒を片手に、ちゃぶ台ひっくり返して、ジャッキー・チェンの真似をしているに違いない。
そして天使に「また障子破ったの!?」と怒られているのだろう。

親父は知りたかったことだらけだったけれど、きっと天国で全部答え合わせして、今も笑っている。


まとめ

「知りたかったこんなこと」――それは、教科書にもマニュアルにも載っていない。
だけど、親父が身体を張って実験してくれたおかげで、私は学んだ。

・酒は裏切る
・焼肉は有限
・スクワットは一日で効かない
・機械は親父を嫌う
・採点機は親父を認めない

そして一番大事なことは、
笑いは生きている証拠だということだ。

親父、あんたは答えを知らなかったけど――代わりに腹筋が痛くなるほどの笑いを残してくれたよ

 

 

 

 

 

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