十二 空

 駐車場の出口を見上げて、最上はその明るさに雨上がりを知った。

 藤堂は水鏡のバッグを持ち、雨上がりの日差しをその笑顔に受けながら、最上の後に続く。

桜木は既に眼鏡を掛けていた。道具一つでここまで変われる人も珍しい。

七海はスカートのポケットに手を突っ込んで、周囲に鋭い視線を配っていた。

やがて駅構外の階段を上がり、駅前ロータリーや、桜通り入口を見下ろせるテラスに着いた。

テラスの壁際に、駅構内の方へ向けて設置された緑色の青銅製ベンチがある。一同が取り巻いてそれを見守る中、藤堂は水鏡の荷物をベンチに乗せた。その隣に立った最上も、そこへ水鏡を下ろそうとする。

「最上君………私も…魔神、だった……」

 下ろそうとした身体を背負ったまま、最上は答えを選ぶ。水鏡の行動を察した藤堂が、心配して手を貸そうと試みたが、彼女は自力で、そろりと最上の背中から下りた。

「そのようだな」最上は水鏡にそう言ってみた。

「やっぱ…ショックだね? …ちょこっと」

 俯きかけたまま、水鏡はスカートの裾を直しつつ、最上の顔を上目遣いで覗き見た。

 最上はテラスから遠くを眺めていた。水鏡のかつての言葉を信じ、今度こそ彼女の期待を裏切らない回答を試みる。

「…だろうな。……だが、これで俺の背後を守れる」

 パァーッと明るくなった水鏡の表情を盗み見て、最上も自信に満ちた笑顔で再び遠くを眺めると、遠くの空に大きな虹が立ち昇っているのが見えた。

 水鏡の後ろに爽やかな笑顔の藤堂が、手を腰の後ろで組み、背を軽く逸らして立っていた。その直ぐ後ろに、桜木が両肘を抱いて遠い眼を空へ放っている。少し離れた所には、頭の後ろで手を組んだ七海が、空を仰いでいた。

 エヘへ…といった感じの表情は、水鏡には珍しい。最上は横目で見てそう思った。水鏡が右の腕を取り、抱き締めるのを見届けると、眼を虹へ戻した。