「葉月!!」

 地下四階へ着くと、その対角の辺りに十数名はいるだろうか、人の姿があった。その奥に、光り輝く結界が地面の上に半球を描いていた。

 最上が走り寄って行く。それに注意を促す代わりに、藤堂は周囲に気を配りながら後を追った。二人は余計な間合いを詰めて、凡そ二十メートル程の所で再び立ち止まった。

結界の中には、両膝を地に付け、腕をだらりと下げ、天井を見上げるような格好で眼をカッと見開いた水鏡の姿があった。剥き出したような白目が宙を睨んでいる。

人質を捕られて、最上の怒りは既に限界を越えていた。目前の敵を、全て塵に変えたいような、破壊的衝動が支配しつつも、僅かながら失えない理性が、最上を辛うじて人に留めていた。

「葉月に何をした?」

「まだ、何もしてねぇよ」

水鏡の傍らに立ち、それを聞いていた男が口元を歪めて答えた。そして厳城大附属の学ラン…。

彼の手下と見られる、最も手前に立っていた少年が、

「皆で可愛がってやろうかと思ったのによぉ、ヘッヘッヘ…」と品の無い笑いを浮かべる。

 その瞬間、最上はその少年に強烈な視線を放つ。

 少年は白く瞬いて塵になった。

 瞬く間に空気が変わり、先程、口を開いた水鏡に最も近い少年が驚愕の顔を浮かべて、思わず一歩前に踏み出す。

「末氏琢也はお前か?」

 最上がその少年に尋ねた時、後ろに新たな足音がした。気の性質を感じ取った最上は、それが七海のものと判断した。

 桜木も例の移動法であろう。いつの間にか地下四階に来ている。役者は揃っていた。

桜木、藤堂、七海の三人は最上の後ろで凛として立っていた。

「そうだ。…四人で俺達全員殺る気か?」

「一人でやればいいのか?」桜木が涼しい声で尋ね返す。まるで何でもないぞ、というような冷ややかな声だった。