「…ヘ、ヘイラム……」フォウリエンの怯えが手に通るように分かる。

「もはや生かしては返さぬ……」

フロアを軋ませるような強烈な威圧感を纏った桜木の言葉。彼女は左手をそのまま自然な位置で下に向けて翳すと、手元に現した青白い光の中に、一本の黒い剣を出現させた。それは、彼女が人間に与えられた魔法の道具、魔神用の武器であった。

 最上が再び走り出す。地下二階への斜面に差し掛かろうという時、再び発光体が視界に入って一瞬足を止めた。

光弾を両手に纏い、それを構えて動かないフォウリエンに向かって、桜木は剣を構え奥義に入りながら、凶悪な表情でゾッとするような声を発するのだった。

「…愚か者めが……地獄の蓋を開きおってぇ…喰らうがいい!!」

 最上は構わず走った。

 地下二階に降りると、またしても行く手に五人の人影が見えた。どうやら厳城大附属の生徒とは違う様だが、高校生の少年少女達に違いなかった。

 最上が身構えるより早く、目前に吹き上がった爆炎が消えると同時にまたもや人影が現れた。

「最上! 急げ!」

七海の声。同時に二箇所に火の手が上がった。絶叫を上げて倒れた二人の火達磨(ひだるま)達は転げ回る力も失って直ぐに動かなくなる。その焼け跡は、最上が初めて畠山にあった時の事を、思い出させた。

「死ぬなよ!?」最上はそう叫んで先へ走る。

「あ? あたし!?」七海は次の瞬間、大声で怒鳴り返した。「死ぬわけねえだろう! あたしが!! 早く思い出せよ!!!」

 七海は残る三人に視線を定める。

「紅獄のエルフレムだ。テメエ等、相手が悪かったな」