ベランダから下を見下ろすと、駐車場があり、道を挟んだ向かいは売地だった。その向こう、正面に大きな森林が見えるが、スタンドのヘッドが見えるのは野球場の設備であり、巨大な公園である事が分かる。遠くには幾つかのマンションが立ち並んでいた。駅とは反対の方向だった。
キッチンを覗く七海。手洗いを覗く藤堂を他所に、最上はソファーへ向かった。玄関を背にして右に最上、左に水鏡が座る。
両足をきちんと揃え、両手を組んで行儀良く座る水鏡の隣で、最上は左足を上げて足を組み、腕組みをして大きな窓の外を眺めていた。
「葉月…」
「はい」
心地良い。小鳥の囀りに似たその声が、最上の鼓膜を揺らした。
藤堂が戻って来て、もう一方のソファーの中央にトンと腰を下ろした。手を太腿に置いて両足を投げ出すと背もたれに身体を沈める。
「不安だろう。…何が聞きたい?」
七海もやってくる。姿勢を改めて、丁寧に座り直した藤堂が水鏡よりに詰めたので、彼女は一番窓際に座って右足を上げて組み、両手を頭の後ろで組んで背もたれに寄り掛かった。
「まず七海さん」
心配そうに覗き込んでいた藤堂を掠めて、水鏡は七海へ言葉を発した。
「鞘邑だよ」七海は微動だにしない。
「はい、鞘邑さん。桜祭り当日の駐車場で、何があったのか話して下さい」
水鏡はそう言いながら、右手の手探りで最上の左肘を探り当てた。最上が脇を空けると水鏡は引き寄せるように手を掛ける。
「厳城大学附属高等学校一年、前芝康孝を焼き殺した」天井を見詰めたまま、七海はさらりと言い放った。
テレビの方を向いていた藤堂が、確かめるようにしっかりと瞬きを二、三、繰り返し、静かに七海を振り向いた。
水鏡に至っては、左手を口へ当てるような仕草をしたが、その手が震えていた。
「…ひ、人を…殺……した………?」
「人じゃないよ、魔神さ。泥濁のハスナワーを灰にした」
そして真実は語られたのである。