「葉月ちゃん、あかんて! 黒いスーツの女ゆうたらヘイラムやろ?」

畠山は、一旦そこで最上を伺って、再び水鏡に向かい話し出した。しかし、最上は一人しまったと思い、畠山の動向に注意した。

「あいつら危険なんや。ま、親人派ちゅうたら比較的優しいはずなんやけど、でも戦いに巻き込まれたら、葉月ちゃんも危ないで!」

「ヘイラムって言うの?…黒いスーツの人。七海さんとも関係あるの?」水鏡は最上の腕を強く揺すった。

「あんさん、七海ってあの茶髪の? …っちゅうか…」

 畠山はそこで立ち止まった。畠山の頭の中で、散らばった破片が一つになろうとしていた。

「葉月、藤堂さん! 走れ!」

 最上が声を殺して叫んだ。

「え?」

 水鏡は聞き返したが、勘の良い藤堂が水鏡の手を取って走り出した。

「あー走らんと。ええよ! 葉月ちゃん達、行ってや。ウチやっぱあんさんに用あるわ」

「嫌! 話してよ。沙霧ちゃん!」

 十五メートル程離れて、水鏡達は止まった。

「駄目だよ! 最上君必死じゃん! 何かやばいんだ! きっと!」

 藤堂が傍で説得する。だが水鏡はそれ以上遠くへは行かなかった。

「二人で出て来たんか…メイジョフが消されたあの場所から…」

“切り替えが早いな…”

 最上は凄まじい気を感じながら、畠山についてそう思った。勝てなくてもいい。彼女等さえ逃げてくれればそれで…。

だが、水鏡は逃げないだろう。最上がここにいる限り。それが危険な状態であれば尚の事、彼女は逃げない…。

「誰か聞こう思うとったんや。ハスナワー殺ったんとはちゃう奴や。燃やしたんとちゃう灰や! ヘイラムにそんな能力は無いはずやで!? 濃酸のメイジョフ殺ったんは…殺ったんは、あんさんか?」

 お前だったのか。そう言う言い方だった。彼女の嗚咽混じりの声。悲痛だった。

「何か…何だろうこれ…何か、怖いよ…最上君、私怖い…。畠山さん、どうしちゃったの…?」