二人は教室へ戻って来ると、中には岩見と御柳が、席で着替えて待っていた。

「俺等もう行くけど、大丈夫だったか?」御柳が立ち上がってこちらへやって来る。

「いったい何があったんだ?」岩見も傍へ来て尋ねた。

「さあ何かよく分からなかったな…」

「?」

 岩見が御柳と共に顔を見合わせる。最上は笑って見せた。すると、岩見と御柳も笑った。

「まあ、何も無ければいいんだが…じゃ、俺等これで」

 御柳は岩見とサッカーグラウンドへ向かった。

「何か知らないけど、私も行くよ。最上君早くサッカー部入りなよ。私、試合見てないけど物凄く上手いんでしょう?」

 霧小路もそう言うと「バイバイ葉月!」と付け加えて体育館へ向かった。

「いいかなー。二人と一緒に帰ってもいいかなー」

「いいよ。沙霧ちゃん一緒に帰ろう」

 水鏡が返事をする。

「最上くーん」

「あ、いいよ。一緒に帰ろう」

 どうも、藤堂は最上に気を使ったらしい。自分に妹がいたらこんな感じだろうか。少し違う気もするが…。

 最上と水鏡、そして藤堂は三人で鳳凰高校の公園のような景色の中を正門へ向かった。

「私、今月末でスイミングスクール辞める事にしたんだ」

 水鏡は3メートル程、先に目線を落としながら話し出した。

「弟はもう救えない。私はもう水泳得意だし。続ける理由なくなっちゃった」

「良かった…自分を許せたんだな」

 最上は安堵して深呼吸する。その様子を右で盗み見た水鏡が再び視線を落とすと笑顔で

「全て最上君のお陰。感謝してる」

「そう、俺のお陰」

 水鏡の感謝の言葉に照れ臭くなった最上は、柄にも無く冗談を言ってみた。嬉しさを可笑しさに含めて水鏡は笑顔のまま、左肩をぶつけて最上を押した。軽くよろめく最上。

「水泳辞めたらいつも一緒だね?」

 水鏡は下校の後の話をしているようだ。魅力的な話だった。だが、今の最上には決して叶わぬ夢。凡そ幻でしかない。最上は例によって、悟られぬように相槌を打った。