「…覚醒と言うのは、……力と記憶を取り戻す事か」
「そうだよ」
最上の質問に七海は答えた。
「お前達が散々言っていた…思い出すべき記憶というのは…前世での記憶の事だな」
声が詰まったのか、桜木が黙って繰り返し頷いているのが見えた。
「あたし達は、同じ魔神を王と崇め、共に戦って来たんだ。最も固い絆で結ばれた戦友だよ。まあ、色々あってさ。で、そう、あの親人派の魔神だ。絆で結ばれた強力な軍団を用いて、戦略的な戦をする勢力の皇帝となったんだよ。彼はとうとう魔王になった。強力だが力押しの他勢力と異なり、彼の勢力では魔神同士が力を合わせるといった戦法が多かったね。あたしこれ大好きでさぁ。まあ人間では当たり前の戦い方だけど、魔神の価値観では、弱者の虚勢に過ぎないとされるね」
七海はそう言った。
「俺…魔神だったんだな。…お前達と同じ、親人派の魔神」
最上は仰ぎ見た宙に、僅か十数年の人生を振り返ってみた。
そして日曜日の記憶。デパートの屋上で見た橙の空、美しい水鏡の顔、温かい身体。自分を堕落させそうな程、優しい人の心を思い出した。暗い青春時代に唯一幸福を感じた半日の記憶。人間として過ごした最後の日。魔神の力を知らずに過ごした最後の日。
“成る程…俺は親人派だ…”
全身に力が入らず、へらへらと笑ってみる。最上は泣く事が出来なかった。
暫く会話が無かったのは、桜木と七海が配慮してくれたものだったのだろう。
それにしても、力も良く分からないまま使っている。いずれは覚醒するのだろうか。記憶に関しては皆無である。前世の記憶など、いったいどうしろと言うのだろう。受け入れるべき事実は分かって来たが、不安材料は山積みだ。