七海が話を引き継ぐ。
「違うよ最上、目的の事じゃなくて戦い方だよ。人間を支配、使役して戦う、魔神としては当然の構想とは別の手段で戦った魔神がいたんだ。例えば風を司る魔神達もいれば、土を司る魔神達もいる。彼は司るその一つに人を司ると言われた魔神達の一人だ。魔神達の中には、人類と共存共栄を目指した、凡そ魔神の価値観において、その風上にも置けないような魔神達がいたんだよ。最下級としての扱いを受け、誇りすらも認められなかった非力な弱小魔神達がね」
「どうなったんだ?」
最上は単純に尋ねた。気楽だった。聞く気が無いと思われているかも知れない。しかし桜木はそれに応じたように口を開いた。
「最初の世界が、ある下位魔神の勢力下に治まる頃、二つ目の世界の形勢は覆しようの無い所まで来ていた。親人派の魔神の勢力下に治まりつつあったのだ。親人派の魔神達は人間達に与えられた、魔法の道具を手元に出して駆使し、戦闘を有利に進め、また心の力、つまり魔力の強さに通ずる力だ。その使い方に極めて優れていた。元々人間の得意な所業だったよ。更に人間は自分達の能力を拓き、鍛えるに当たり無限の可能性を持っていた。司る魔神達然りだ。嘲りを恐れず、人を司る魔神と、誇らしげにそう唱えて戦った魔神達には、嬉しい戦果だったわけだ」
今度は七海が口を開く。
「元々、人を司る魔神は下位魔神の中でも最弱だ。だが、それを極めた魔神の存在は今まで確認されてない。魔神伝承とか言われる伝説では『人司りし事を極めたる者は、即ち最強の名を冠す』と言うのがあるんだけどね」
七海はここで一旦話を区切った。そして話は更に続くのだった。
「二つ目の世界が決着した丁度その頃、三つ目の世界は疲弊し、混沌としていた。いずれ泥沼のようなその世界へ行くとしても、今そこにパワーゲートを開くのは得策でない。そこで、親人派の魔王は、四つ目の世界の攻略に向かう事にした。いち早く形勢を固める為に他に先んじて、パワーゲート開こうと考えたんだ。だが、この世界には元々天界の定めた降臨の仕組みが未だ健在だった」