藤堂が霧小路、水鏡と三人で肩を組み突っ込んでくる。当然だが、振り向き様に突撃された最上は、グラリとよろめいてから、笑った。
「何だ、君らか」
「『何だ、君らか』じゃなぁい…」
水鏡が膨れっ面でスネて見せるが、どうやらからかっているようだ。最上は経緯を説明して、水鏡の理解を得る。すると水鏡がこの可笑しな突撃の経緯を説明してから最上の顔を覗き込み、こんな事を言って笑った。
「今度見つけたら、まぁた突撃しちゃうよ?」
その日最後の授業は、またしても担任の英文読解。桜木はいつもながら、あの透き通った水晶のイヤリングがよく似合っていた。英文読解は最上の苦手科目で、英語が苦手な御柳と意見が合うところだった。
終業チャイムが近々待ち遠しい時に、御柳が指された。教室の外を眺めていた窓際の岩見も、その時ばかりは一旦室内を見て、最上と顔を合わせ、プッと吹いてからクスクスと笑った。
外などを眺めてはいるが、岩見は出来るのだ。先日も英会話の授業中、抜群の発音で周囲を唸らせ、桜木に「凄いわね、何かラジオのDJっぽいけど」と言われ、「洋楽聞くんで」と答えて見せた程だ。
「ハウ、ドゥーユー、ドゥー、アイハブ、シーン、ユーフォア、アワイル…」
御柳が必死で教科書を読むのを、頑張って聞いていると、左手を腰に当て、右手に開いた教科書に涼しい目を落としていた桜木も苦笑いで
「貴方ねぇ、私の事嫌いなの? 他の科目優秀なんでしょ? …んー、ま、まあよし! …それで?」と言って翻訳を促した。
「えー…『何、やってんの? 私は…見られた貴方を…持っている…遠くの…わ、ワイル…』…」
桜木が、腰に当てた左手を今度は額に当てて呻きながら、何かに耐えるような仕草をしてから、
「『見られた貴方』は持ってない! もう…頑張ってよ御柳君!」と言った。
周囲がゲラゲラ笑う。御柳は立ったまま頭を掻きながら、一緒にゲラゲラ笑ってから
「先生、分かりません」と答えた。
突然桜木は顔色を変え、鋭い表情をする。それに気付いた生徒から直ぐに静まり返っていった。続きを読解するべきかを迷っている御柳を他所に、凄まじい気を放っている。