メイジョフと呼ばれた男は、恐らく猛毒か酸の力ではなかろうか。いずれにせよ、触れるのは危険であると考えられる様子だった。メイジョフの融解を始めた身体は、既に沸点をも越えたようだ。凄まじい蒸気を発しながら、右手で最上に掴みかかって来る!

「止せぇ!!!」

夢に出た女が必死に叫び、無謀にもメイジョフに飛び掛るが、最上の反射的な行動の方が一瞬早かった。

振り翳した最上の右手。その先に白い光が現れ、幾何学模様が幾重にも発現したように思う。すると瞬く間にメイジョフの姿が光り瞬き、次の瞬間消し飛んで塵となった。白い灰が辺りに拡散していく。

いったい自分は何をしたのだろう。今の光は何だ。俺は…何者だ? そんな疑問が最上の頭の中をグルグル回り続けて、彼は力無く崩れた。

「行きましょう」

 夢に出た女。確かヘイラムと言った。彼女は最上に、共に地上へ戻るよう促すのだった。

 何故か凄まじい疲労感の中、全身の力を振り絞って最上は立ち上がった。

 不思議だった。暗闇に目が慣れたと思っていたが、今の自分はどうやら、暗闇でも目が見えているようだ。その目で見ればヘイラムは紛れも無く夢に現れたあの女だった。

 地上へ出ると、岩見達が入口付近をうろついていた。傍に黒いスーツに白いブラウスを着たヘイラムが歩いていたので、多少気になった様子だが、最上が疲労しているのを見て心配してくれたようだった。

「どうした? 大丈夫か?」

岩見が血相を変えて駆け寄って来た。御柳が暗い入口の奥を覗きながら少し驚いて

「やっぱ、この中だったか! 地下一階までは降りたんだが、見えなくてなぁ…。お前よく…どこまで降りてたんだ?」

「何があったの? 最上君…」

 水鏡が中腰になって、正面から肩を起こすように顔を覗き込んで来た。

「自分でも分からない。何が起こったのか…。俺はこちらの方に助けられて…」