とたんに歓声が沸き起こる。毀れ球に走りよったのは、一年チームの6番。誰もがまだ攻撃が続くと思っただろう。だが、それは無かった。彼はそのままシュートを打ち放った。その弾道は低く、恐らく地上すれすれだったに違いないが、センターサークルから少し相手エンド(相手コート)に侵入した所からの、打ち返しのミドルシュートであった。それはフィールド上のあらゆる人影の間を一閃して、一瞬の内にゴールのサイドネットに突き刺さった。
その瞬間、沈黙が遮った後、凄まじい歓声がグラウンド上に降り注がれた。
「ねえねえ、あなた達一年生? あの6番の子、知らない?」水鏡に注がれる質問。
「あれはうちのクラスの男子生徒です」
「何て名前!?」
「え? 名前ですか…」
「最初に点入れた人、かっこ良くない?」
「あれもうちのクラスの岩見君です」
また、歓声。今度は一年チームのピンチらしい。
「おお! あの一年キーパー何だあれ!!」
「あれ、誰だよ」
「あれじゃ、入らねーだろ…」
「これ、レギュラーヤバくねー?」
暫くするとまた水鏡は質問責めになる。
「10番は知ってる?」
「いえ、彼は別のクラスですから」
「クラスどこ?」
「一年九組です」
「ねえ、教えてよ。お願い! あの6番何て人?」
「えー…と、あの6番の人は、ですね」
その時、また歓声が起こる。
「ナイス6番!」
「あいつすげーぞ…ボールに絡む時、マーク三人つけられてる」
その後、水鏡の隣で、桜木が呟いた。
「あら? あの6番…最上君かしら?」
藤堂が心配そうに水鏡を振り返るが、水鏡は苦笑して舌を出して見せた。
「サッカー部に入ったとは聞いてなかったけど」
桜木は疑問を口にしていた。
「ええ、むしろ拒んでました」
七海は腕を組んだままそう答えた。
「ねえ、またチャンスだよ?」
藤堂が言う。見るとオフサイドからの岩見のフリーキックスタートで、ボールが一年10番から最上に渡ったところだった。
「あの2番ものすげえ上手いな。バックライン完璧に仕切ってるぞ!」
「また、6番だ! 誰だって? 最上? 最上か、最上ー!!」
「2番が上がるぞ! 総攻撃か! 何だ? 岩見か? 行けぇー岩見!」
やがて最上からアーリークロスが入り、走り込んだ一年チームフォワードの9番がシュートを決めた。試合はその後、キックオフから、レギュラーチームの吉沢へボールが渡り、最上がマッチアップした所で終了した。