「サンキュ。沢井さん。大丈夫。一人あてがあるから」御柳が最上に目配せする。
「頼んだぞ最上」岩見が静かだが、力強い口調で最上に声をかける。
「何か、見えないんだけど…。貴方サッカーするの? 岩見君達も上手いよ?」
「いや」最上は考え事をしていた。両親への侮蔑が蒸し返していたのである。一人でいる時など、専らそれだった。それとなく見回すと、自分から最も遠い所に座っている、あの黒髪の美少女と眼が合った。
自分は今どんな顔をしているのだろう。ふとそんな気持ちになる。これほど美しい少女を意識すれば、自分は? を問わずにはいられない。きっと憎悪を全面に浮かべてブツブツと呟いていたに違いない。見ると彼女は笑っていた。
可笑しいよな…。でもこれが俺の人生だ、と最上は思う。醜く爛れきった心を隠す場所も求めず、醜いならば醜い自分の身の程をよく知っておきたかった。それが、いざ成長を遂げる時に、実を結ぶと言い聞かせて生きて来た。自分を偽る奴に成長は無い。
最上は唇をきつく結びなおした。すると、例の美少女が、今度は何か違和感でも感じたように、おや? という表情をした。
最上は、どうも苦手になって、そのまま外へ視線をやってしまった。
“気後れか? 全く俺って奴は…”
情けない。という言葉を噛み締めながら、結局何をどう対応しても、格好の付かないところを見ると、自分は劣等感と融合した醜い高校生でしかないのだろう。いよいよ自己嫌悪に沈む自分を、しかし冷静に見詰めているような自分がいるのだった。
沢井というマネージャーは最上の返事はどうでも良かったらしく御柳達と話していた。
「ま、いいんだけど、三人とも頑張ってね。吉沢副部長、超上手いから」
最後にムフとでも付けたそうな口上だ。沢井はそれだけ言って去って行った。霧小路が吹き出すのを堪えてヒソヒソと「何あれ?」と言ったのが聞こえる。
七海が隣から最上に乗り出し
「頑張ってねってさ」やれやれといった苦笑を伴う言い方だ。
「フン」
最上は鼻で笑った。