岩見が念を押した時、前方の川を渡る橋の上で、御柳達の笑い声に振り返る二人の人影が見えた。

「よう一年!」見ると、声をかけたのはどうやら先輩らしい。岩見達が大声で挨拶しているところを見ると、どうやらサッカー部の先輩なのだろう。御柳が囁いた。

「あれ、うちの副部長と一年のマネージャーだ。組は知らない。もう、一年の彼女作ってんのか、はえーな。いいか最上、ああいう身勝手なドリブラーのチームで、ゴールなんて守りたくねえんだよ俺は。守る価値もねえ。待ってるぜ」御柳は副部長の所へ走っていった。

「ゲームメーカーは副部長だ。足元にボールが来ると、いいとこ見せたがるんだな。チームスポーツの風上には置けん。足技が上手いんで皆、文句言えないんだ。だが、お前の苦しめてきた司令塔選手どもに比肩するわけじゃない。いいか、ドリブラーだぞ? あれはお前の獲物だ」岩見も走っていった。

 どうやら副部長という奴は最上のサッカー戦術思想に最も反する人間のようだ。中学時代の予選落ちの記憶が蘇ってくる。あの時、良き理解者がいれば…。そう思うと、急に新入生歓迎試合の事が気になってきた。御柳は完璧だが、フィールドには岩見だけか…。

「苦しそうだね」

心に暗い闇を抱えた最上を見透かしたように哀れみを湛えた七海の表情は意外だった。

二人はそのまま森を抜け、閑静な住宅地を鳳凰高校正門へ向かった。

昼休みになると、それぞれが昼食の場所を求めて動き出す。売店もあるのだが、最上は、岩見達と専ら学食だった。食堂は長机が並べられた広大な部屋で、いつも二大メニューに長蛇の列ができる。学食のポークピラフと和風きのこパスタはいつも大人気だった。

三人は食堂の席に付くと五分で食事を終える。その後は大抵サッカー談議だった。

「食うの、はえーなー」

 見ると七海が盆を手に最上の右隣、御柳の正面に立っていた。

「待っててやるよ。ゆっくり食っていけ」最上が椅子を引いてやると彼女はそこへ座った。

 七海が口をつける前に、女子生徒三人が御柳の隣に二人、七海の隣に一人座った。見ると同じクラスの三人組である。確か入学記念撮影の時、キャッキャとはしゃいでいたはずだ。