「あたしの事は鞘邑でいいから」

「了解!」

岩見と御柳が敬礼の仕草で応答した。

「入部か…いまいち乗れないんだよなぁ…」

最上は戦術思想が合わず、やがて各自が自己中心的に活動して散っていった、中学校のサッカー部を思い出していた。彼の改まった様子に、三人が注視する。

「死神ボランチが何言ってんだよ。まさかポジション取りに自信が無いわけじゃあねーだろう」御柳だった。

「俺達も随分期待されているようだからな。お前も当然レギュラーだろう。って、そんなみっともない理由で渋ってるわけじゃないのは、分かってるんだがな」岩見が最上の右へ回った。

「オフェンス希望者は特に多いが、ディフェンスは、望みのポジション取れなかった先輩達に未経験者を埋め合わせた様な、はっきりいって笊だ。お前等みたいな本物の守護職なら、アマチュアの中にプロがいるようなもんだろう」真剣な顔で最上を覗き込むように説明する御柳。彼のこんな顔を見るのは珍しいが、やはりサッカーに関しては真剣なのだろう。

「おい、ホントに新入生歓迎試合の前に入部しろよ?」

新歓試合。岩見達の話だと新入生チームと既存レギュラーチームで試合があるらしい。新入生が足りない場合は、勧誘も含めて一年生の部外者を誘ってもいい事になっているそうだ。レギュラーチームはユニフォームがあるが、新入生は体育や運動部が練習で使用するジャージ着用の上ビブス(背番号のついたランニングタイプのシャツ)の使用が認められている為、スパイクとレガース(すね当て)があれば、例え帰宅部でも問題なかった。

「最上、敵前逃亡は銃殺刑だぞ」御柳が裏拳で軽く最上を叩いた。御柳の眼が細まる。ここ一週間、御柳のこんな目を見る時は悪ふざけが始まる兆候だと分かっていた。

「フン、何だそれは?」

「いや、鞘邑の呪殺刑にしよう。いや、強制サッカー部員化の呪いの刑だ。なあ、鞘邑」岩見まで七海を指差しながら笑っている。

「最上はあたしのオカルトサークルに入れるよ」七海が話に入ってきた。

「駄目駄目駄目そいつは駄目だ。じゃあ、こうしよう。オカルトサークルに入れるからサッカー部にも入らせる…刑」ゲラゲラ笑う御柳。

「それならいいよ」七海もそう言って笑った。

「待ってるぞ」