◆概要

 兵士たちの不法行為を追求する二人の軍法務官の姿を通して、歪められた人間性や戦争の悲惨さを抉り出すイギリス製のテレビ映画。一人は物静かで理性的に事件を解決してゆくデビット・ヤング大尉。対して、決断力と行動力に富むフランク・ウィタカー少佐。対照的な性格の二人が戦時下の様々な事件に立ち向かう。

 軍法務官を描いた話としては、近年の「JAG犯罪捜査官ネイビーファイル」が有名ですが、こちらの「激戦」は「ネイビーファイル」に比べると地味な内容です。そもそも原題の「Court Martial」は軍法会議のことで、それが何故「激戦」という邦題になったのかについては、視聴者を引き付けるために少しでも戦争アクションっぽい題名にしたのだろうと容易に推察されます。

 製作は全26話で、日本ではNET系で昭和41年8月から放送されましたが、全部ではなく24話の放映のようです。


◆登場人物

ヤング大尉:ブラッドフォード・ディルマン(山内雅人)

ウィタカー少佐:ピーター・グレーブス(黒沢良)

マッカスキー軍曹:ケネス・J・ウォーレン

ウェンディ軍曹:ダイアン・クレア

パーキンス軍曹:アンジェラ・ブラウン


◆各話あらすじ(放送リスト)

第1話 偽装情報作戦

放送日:昭和41年8月17日

 大戦末期のベルギー。ドイツ軍と連合軍が入り乱れて激戦を繰り広げている時、アメリカ軍のタラント二等兵が指揮官を背後から射殺する。ウィタカー少佐は、軍法会議でタラントの弁護を引き受けることになったが、実はタラントはドイツ軍の回し者だった。

 

第2話 修道院爆破命令

放送日:昭和41年8月24日

原題:THE HOUSE WHERE HE LIVED

 米軍のビアンキ中尉はイタリアの名高い修道院の爆破命令を受ける。この世界的に有名な修道院はドイツ軍に占領され、強力な砲兵陣地に改造されつつあった。イタリアに潜入した中尉は、レジスタンスの協力を得て爆破作業にかかる予定だったが急に任務の遂行を拒否した。

 

第3話 上官殴打

放送日:昭和41年8月31日

 ディーガン軍曹の弁護に乗り出したヤング大尉は、彼の異常な行動の裏に、 意外な事実が潜んでいることを掴んだ。

 

第4話 脱走兵の敵意

放送日:昭和41年9月7日

 ウイタカー達は、将校たちの正体が英軍人に化けたドイツ軍人であることを見抜き、知恵を絞って彼らと対決する。

 

第5話 鬼少佐

放送日:昭和41年9月14日

原題:SILENCE IS THE ENEMY

 連合軍の特殊訓練所で起きた、脱走将校射殺事件をめぐって、そこでの残酷な訓練ぶりと陰惨な戦争の傷跡の描く

 

第6話 レジスタンスの女

放送日:昭和41年9月21日

 美しいフランス女ガブリエルは、情報を買うための5万ドルを横領したとの理由で、米軍戦略本部のドルウ少佐から告訴された。ガブリエルは、レジスタンス部隊を率いてドイツ軍と戦い、ジャンヌ・ダークの再来として連合軍側に人気のあった女である。彼女の弁護を引受けたウィタカー少佐が調べてみると、次々に意外な事実が出てくるのだった。

 

第7話 砂漠の補給戦

放送日:昭和41年9月28日

 酷熱のイランで起きた軍用トラックの横流し事件。無情な上官命令に抵抗する、ジャクソン軍曹の不敵な反魂を描く。

 

第8話 シシリー上陸作戦

放送日:昭和41年10月5日

 ピネリ中尉が射殺した現地人バートルメオは、シシリー島に巣くう恐ろしいマフィア団の団員であることが判った。

 

第9話 反逆者

放送日:昭和41年10月12日

 敵陣に情報を流してイギリス軍の大敗を招いた、ある報道特派員の罪を法務官のウィタカー少佐とヤング大尉が暴く。

 

第10話 戦場の鬼

放送日:昭和41年10月19日

原題:LET NO MAN SPEAK

 オランダのあるレジスタンス部隊で起きた殺人事件。冷酷非情な鬼大佐のひきいる農民部隊の内幕を法務官がえぐる。

 

第11話 脱走兵

放送日:昭和41年10月26日

 純朴な兵士ウィンストンの美術品窃盗事件。空襲下のロンドンをバックに、命がけで捜査に当る法務官の姿をえがく。

 

第12話 死者7名重傷1名

放送日:昭和41年11月2日

 マロイ中尉は、上官のワイルダー少佐を軍事法廷に訴えた。作戦に私情をまじえて、自分を死地へ送ったというのだ。

 

第13話 愛国者

放送日:昭和41年11月9日

 フランスの解放地区で、ある未亡人が米軍の大佐を刺殺した事件。法務官デビッドの努力で彼女のぬれぎぬが晴れる。

 

第14話 空飛ぶ虎

放送日:昭和41年11月16日

 中国とインドを結ぶ空輸ルートで発覚した金の密輸事件。熱帯の猛暑に冒された兵士たちの、異常な心理が生んだ犯罪。

 

第15話 砲撃下の殺人

放送日:昭和41年11月23日

 ドイツのある町で、米軍のデミアン軍曹が、著名な歌手のマグダ・ケラーに殺された。事件の謎をデビッドが解く。

 

第16話 退役少佐

放送日:昭和41年11月30日

 軍のペニシリンを横流しにする米軍曹と、陰で彼らをあやつって、甘い汁を吸う退役将校の犯罪を法務官が暴く。

 

第17話 二人の軍医

放送日:昭和41年12月7日

 東欧のある島で起きた軍医射殺事件。命を預ける兵士と預かる軍医との、微妙な心理のもつれを鋭いタッチで描く。

 

第18話 汚名と友情

放送日:昭和41年12月14日

 親友のベンソン大尉が婦人将校殺しの疑いで捕らえられたと聞いて、デビッド大尉は驚き、友を救うために現地に飛ぶ。

 

第19話 聖夜の裁き

放送日:昭和41年12月21日

 アメリカ軍の一兵士が脱走して修道院に逃げこんだ事件を通して、戦争という極限での夫婦愛と宗教の問題を考える。

 

第20話 逃亡者

放送日:昭和41年12月28日

 強制収容所で、死体処理という残酷な任務を命じられ、苦悩のあまり精神錯乱に陥った、あるインテリの姿を描く。

 

第21話 ニセMP

放送日:昭和42年1月4日

 ニセMPの正体を探っているうちに事件は思いがけない方向に発展、ドイツ軍が集めた宝石類の秘密が明るみに出た。

 

第22話 義勇軍の英雄

放送日:昭和42年1月11日

 アイルランドで、過激な愛国者が米軍伍長に殺された。国際問題をはらんだ、複雑な殺人事件をフランク少佐が追う。

 

第23話 捨て石作戦

放送日:昭和42年1月18日

 特殊な任務の重みと人間的な苦悩との板ばさみに耐えられず、ついに同僚を殺してしまう情報将校メリル大尉の悲劇。

 

第24話 やくざ軍曹

放送日:昭和42年1月25日

 米軍軍曹のカラハンは、独軍の捕虜を脱走させ、軍法会議にかけられるが、この男アメリカでは名うてのギャングだった。

 


◆雑誌記事

テレビジョンエイジより

 

解説

 第二次大戦下の極限的状況のなかに生じた様々な事件と、その処理をめぐる軍事裁判の展開を描き、戦争と人間の相剋を浮彫りにした異色シリーズ。邦題名からは『コンバット』のよな戦争アドベンチャーの印象を受けるが、チャック・コナーズとベン・ギャザラの主演シリーズ『事件と裁判』をヒントに制作したといわれ、この戦場版といった趣きがある。英国ITCの作品で、本国ではATVから、アメリカではABCネットワークから、それぞれ66年に同時放送された。代表制作者はマイケル・レルフ。出演は軍事法務官フランク・ウイタカー少佐はピーター・グレーブス、同じくデビッド・ヤング大尉にブラッドフォード・デフィルマンが扮している。ピーター・グレーブスにとっては「『名馬ヒューリー』『むちと拳銃』に続く三度目のレギュラー作品。日本では66年8月からフジ系で放送されている。60分。

 

物語

 戦争は人間に様々なドラマをもたらす。そして、その多くは悲劇である。突撃命令に抗して戦争を離脱、スイスに逃亡する寸前に捕えられたアメリカの若い兵士、病気の夫の生命を守るため、連合軍を裏切ったレジスタンスのフランス女性、余儀なく二重スパイ活動を続けるユダヤ人etc・・・・・・軍事犯として法廷に立たされ、厳しい追求を受けるこれらの人々は、しかし、本当は戦争の被害者ではないだろうか?軍事法務官のフランク・ウイタカー少佐とデビッド・ヤング大尉は大学時代からの親友だが、裁判をめぐって彼らの立場は真っ二つに別れることがある。検察官として弁護人として、激しく応酬しながらも、彼らは互いに信頼し合うものを持っている。それは人間への“愛”なのだ。