細い性別不明のお年寄りが売っている月面のような凸凹のある真四角の餡子入り菓子やあんず饅頭、うさぎのべべという名前の白く滑らかな丸い餅。
べべとはなんだろう。赤子のことのような気がする。
そのおばあさんの店の数軒先には冷めた焼き鳥や切り干し大根や干瓢巻きを売る惣菜屋があり、だんだんと何かしら食べたいような気分になってくる。
しかし家に食べ切れないほどのニンジンがあることもまさか忘れてはいないので、ニンジンの割合を減らすためにも夕方になると割引がはじまる八百屋で野菜を買うことにした。
安くなっているもののなかから選ぼうということでジャガイモか茄子かレタスかニンジンがあったのだけど、もちろんニンジンは無視するにしても僕の少ない稼ぎのなかでより効率的にお腹にたまりそうなジャガイモを手に取ろうとしたところそのすぐ横に半額の切り干し大根があるのが目に入った。
さっきの惣菜屋でも美味しそうだったし、干してあるということは膨らむはずだからもしかしてすごくコスパなのではないかと思う。
ちなみに僕はコスパという言葉の使い方の正解が未だによくわからず、コスパが安い、高い、神、良い、優れている、どれもピンとこないので、なにかがお得だという場合は「これはコスパだ」と思うことにしている。
何倍にも膨らむことを期待して切り干し大根を買うことにし、一袋で百グラム八十円を支払う。財布にはあと四百円が入っていて、なにかキリ良く使い切れたら嬉しくなれる気がしたので、商店街を物色する。
こういったショッピングエリアに高確率で存在するセンスも客もやる気も無さそうだけど何故か長年営業できている衣料店というのがあるが、この商店街の終わりかけのところにも、そんな布団やパジャマやサンダルなんかが乱雑に置かれたり吊られたりしている店がある。
その店でおそうじスリッパというなんと履くだけで掃除ができるという素晴らしいアイテムがちょうど四百円だったので、これは少し大袈裟にいえば運命的にも感じ購入した。
帰り道、スリッパと本と犬の瓶と切り干し大根の入ったビニール袋を左腕にかけて意気揚々とアパートに戻ると僕の部屋のある102号室のドアの前にゆずポンさんがいた。