□マッカス vs ツァイ
およそ500メートル上空を、アーマノイドのエナジー反応を頼りにバドは追跡した。
「セグ…動けるか」マッカスはセグを気遣う。 ツァイのソードはセグの肺付近の動脈を切り裂いていた。
「………………」セグは哀しげな眼でツァイを見据え、何かを伝えようとしている。
「置いていけと?」
「…………ウッ」思考能力は幼稚だが、感情の起伏は顕著だ。
「そうか…」マッカスは巨体の化け物に複雑な想いで触れると「まぐれは二度続かない…すぐに戻る。ここで待ってるんだぞ」セグは言葉の代わりに瞼を閉じて応えた。
「切り刻んでくれよう…出来損ないめら」誰に言ったでもなく、マッカスは捨て台詞のあとで背中の大翼を赤黒く染めて羽ばたく。大翼は上昇気流を掴み、瞬く間に地上のセグを小さく見下ろした。
バドがツァイたちを追跡する方角を額の中心部にある超音波センサーにキャッチすると…飛行する彼らのビジョンが「見えた」と、呟く。
マッカスはキャッチした方角へ両腕を伸ばす。両腕には特殊リングが5個ずつはめられていたが、それらが“ブゥオン”と異質な音を発すと手首から順に外れて浮いた。
次の瞬間「我が道しるべとなれ」呪文のようなひと言でリングは青い閃光を直線で結び等間隔を守りつつツァイたちの方角へ飛んでいった。空中に青い光線が2つ並ぶそれは誘導線だ。
“フェイスシールド”マッカスが念じると、たちまちシールドで大翼以外がアーマーに覆われた。
「………スリー.ツー.ワン」“ブゥオン”翼の付け根にあるパワードジェットが噴射する。
…………
「後ろ?!」ツァイが叫ぶ。
《来たね、化け物!》
「あれはキミに頼んだ!」
《わ、ワカッタ》
「手、離して!」
《了解!》
アーマノイドの手からツァイが落下する。ズンズンと小さくなるツァイが着地に成功した。それを見届けると、アーマノイドがバドの追跡を迎え撃つ態勢になる。
巨大な拳がアーマノイドの顔目掛けて飛んで来る。スレスレで仰け反り避ける。避けると手首を掴みジェット噴射して振り回した。「ウォォ!」雄叫びをあげバドは飛行バランスを失う。
翼を畳み、バドは落下。アーマノイドは滞空で様子を窺う。
落下していた身体を翻し、バドは羽根の一部を矢のように鋭く伸ばすとヒュルヒュルと飛ばしてきた。
《オット!》2本めまで上手く交わした。
《うわぁ!》3本めの翼が脚に絡み付く。《うわぁぁぁ…》得体の知れない衝撃が走り、バドのあとを追って墜落。
とてつもない衝撃が全身を襲う。
《ぐっ………うっ》何故…肉体が無いのに痛むのか。神経回路を遮断しなかったことを後悔した。
《カイドウ!しっかりしろ!》
《ぁぁ…イタイ》
《もうすぐこっちも、》ツァイからの交信が途絶える。
…………
ツァイの眼前にマッカスが立ちはだかる。「遅くなってスマナイな」マッカスは不吉な笑みをシールドの下に隠すと、羽根2本を抜いた。「これは普通の羽根じゃない。とても柔らかく硬い。刺さればグニュっと………全身を這い廻る」言ったすぐからツァイを執拗に追い立てた。
「ハッ!ハ!」息を切らしながらツァイは避ける。
「いつまで避けられる?」凄まじい速さで繰り出される羽根の刃。ツァイは必死で避ける。
「くっ………クソ」ツァイはわざと右腕に刃を受けた。「ングググ…」
「そういう方法もありだ」マッカスはすかさずもう1つの刃をツァイの腹部に………。
“ガッシャン”刃が折れた。
「………たぶん、そうくると想ったよ」ツァイはひらりと跳びあがり、マッカスの腹部を思いきり蹴ると、その反動で右腕に刺された刃を抜いた。
「ウォォォォ!」苦しみながら受地面に全身を転がす。それでも瞬時に攻撃態勢を取った。
「………やるじゃないか」マッカスはツァイを見下ろした。
「もうすぐ…終わるよ」ツァイがニヤリと笑う。
「………しまった」マッカスはツァイたちを追跡するのに必死で、太陽風の発生を感知していなかった。
ツァイは全身の防御装置にアクセス。シールドに覆われるはずだった。
………………
バドはアーマノイドが軋むほど抱き付く。眠っている海道の耳にもギシギシと音が届くほどだ。
(もう………もうちょっと)海道の意識が遠退いていこうとした時、バドの腕の力が弛んだ。
「うっ……」“ズボっ”アーマノイドは膝から崩れて地面に倒れた。
「ウォォォォワ…………」目映い朝日と、砂嵐…どんどん焼けただれてゆく化け物の姿は海道の記憶に収められ、そして戦闘を見守るジョルジオたちにもモニタリングされていた。
continued