□暗闇から。。。
足下を照らす人工灯は均等な間口で進む長いトンネルを、心細げに照らしていた。
「お、お前、目的は何だ!」
「……今は話せない」Bax は潜入時に全身を麻痺させたトンネル通路の番人兵士を肩に載せた状態で歩く。
「ど、どうもしないなら今すぐ下ろせ、下ろしてくれ…ないか」
「ダメだ…」
「なぜ」
「お前の生体反応が無ければ、このトンネルは抜けられない」
「……くっ」“侵入者がそこまで知っていたとは”兵士は残されていた首筋の筋力を脱力した。
うねりながら続くそこは枝分かれして幾つか通路があった。Bax は時々現れるその場所で立ち止まる。兵士はその様子に無関心を装っていたが、気が気ではない。兵士は侵入者であるBax がトラップ通路を選択するよう祈っていたからだ。
その兵士の祈りはまったく届かないまま、10ヵ所以上は存在したであろうトラップをBax はクリアーした。
「……どうやって、ここの機密情報を手に入れたんだ」自分自身が情報の出どころだとは気付いてない。
「…………」
「何とか言ってくれ、ただでさえ息苦しいんだ、気晴らしに教えてくれ」
「話せばよけい苦しい」
「………確かに。でも、お前みたいに潜入したヤツ1人もいなかったし」
「………なんだ」
「なんかお前、かっこいい…ちゅうか」
その兵士の思念は純真無垢そのものだ。…彼もまたバイオプランター出生者である。彼等は幾多の施設から専用の仲介者を経て各国に流れていたのだった。
ある1つの扉の向こう側…。光が届かない地下世界に少女たちは居た。
「シスターが…空の上から私達を見守ってくださっている」
「シスター……悲しそう」
「もうすぐ迎えに来てくれる」
「………シスターに甘えるのは良くないわ」
「甘えるのは当然でしょ?なにが悪いの、自分だけ陽の当たる場所に逃げたくせに、一人だけいい想いしてて、こんな時ぐらい!」1人が言い終わらぬうちに、もう1人が頬っぺたを平手打ちした。
「シスターが選んでそうしたんじゃない!アナタ分かってるじゃない!」
シンと静まりかえる地下空間。
「マザー…」すると1人、奥にうずくまっていた幼い彼女が口走った。マザーとは“鯛我小夜子”のことだ。
「私も……感じる」
「そんなはずは…」
「……もう死んでしまってるのよ」
「別の身体に…生まれ変わったの」
「………」
「マザーとシスターが私達を助けに来たのよ」
「信じられない」
「救いは…あったの…ね…」か細い声で頬を濡らす。
実流樹のコピーグラデーションが誰からともなく手に手を取った。すでに退化した視力の変わりに研ぎ澄まされた感覚を集約する為だ。リーダーシップをとるのはメディサ。彼女が瞑想を始めるとコピーグラデーションもメディサの強い念波を二人に伝えられるよう拡張に神経を集中させる。
「マザー!シスター!私達はココに居ます!」
「ハッ!」実流樹は深かった眠りから引っ張り出された。
continued