□小型戦闘機“雷光”




けたたましい警戒音が鳴り響いた。



「しまった!」「オトウサン!!」武光と旬の恐怖と絶望が折り重なった、その刹那…雷光は何かの力で無理矢理ひねりを加えられた。


「ウォォ!」「いやぁだょぉ!」




《今すぐ岩山に隠れなさい!》どうやってアクセスしたのか、Bax の警告だった。



どうやら地上付近から放たれた光線は“雷光”は避けたらしい。



「うっ」「バァバ!」



《シュン?》Bax が呼び掛けた。



「そうだよ!」



《選ばれた子…シュン。力を解放するのよ、いいわね》



「ウン、ワカッタ」



「な、何を話してるんだ!子供を巻き込むな!」



《今はそんなコト言ってる場合?しっかりしなさい!》



Bax が言い放った諭しの言葉は、武光が子供の頃…母親の小夜子から言われた言葉と変わらない、まるで時を遡っているかのようだった。






□陸空両用飛行船“ドゥキア”





「クッソ、邪魔が入ったぁ…ヒュルルル…避けやがった」身長2・5メートルのトラロアウスは黒サイの硬い表皮を鎧のように纏っていた。



「想わぬ巡り合わせだな。まさかすぐそこにターゲットが居たとは…。お前のシューティングも、あのヒューマノイドには敵わないようだな、トラロ…」ツワンドは高いIQ のヒトDNAを活かされていた。冷静さと残酷さを併せ持ち、海洋哺乳動物のDNA とのキメイラビースト。姿形は目から上、手足の末端部分以外はほとんどがヒトの女性だ。




「どこ行ったぁ…」トラロアウスは雷光のコトしか頭にない。



「とっくに雲隠れしたさ、この磁気嵐じゃお前のサイバーフィールドも役に立つまい」



「ツワンドぉ!キサマ、偉ぶってやがるがこのままぁ、みすみすチャンスを逃す積もりかぁ」目を血走らせてツワンドを睨む。



「お前はナゼ、サイバーとキメイラの両方を船に乗せたと想ってる」



「それは……ヒュルルル…」



「どっちかがNGでも対処する為、だろぉ?」この時点でツワンドはトラロアウスをこ馬鹿にしていた。



「ぉぉぉ…そうか、そうだったのか」



「エヴァーダに関係のある人間は滅多なコトじゃ外界に現れないんだ、チャンスは今しかない。ヒューマノイドが…あの女なら弱点は人質だ。誘き寄せるには人質しかない。さもなくばオレタチが殺られる」



「もうすぐ死ぬからな…オレタチ」



「黙れ…死ねのはお前だけだ」ツワンドはその一瞬、Bax と同じゲノマニュームの軟化スーツを装着すると、武器のソールドを腰の鞘に収めた。



「ど、どうするんだぁ?」



「まだこの辺りに隠れているはずだ、それが証拠にエネルギーパルスが無い」



「なるほどぉ…ヒュルルル」



「オレが追い付けるように速度を下げた、お前はオレが“いい”と言うまで出て来るな」ツワンドは船体の真ん中、下降ゲートに立つと瞬く間に地上へ落ちて行った。



「わ、ワカッタ…」テンポの鈍いトラロアウスが応えた。








□雷光




岩山は至るところにあった。武光が着陸した先はわざと裏をかき平けたスペースだった。



“雷光”は旬の磁気誘導の力を受けてシールドを作り、実体を歪め隠していた。



「オトウサン…」「ナンダ」武光がぶっきらぼうに応える。



「怒ってるの?」「何で」



「だって…」「……怒ってない」



「今はこうするしかないんだもん」



「……解ってる」「じゃあ…どうしてェ?」



「シュンは…頑張ってるだけだ」



「…………」



「父さんは…父さんに怒ってるんだ」武光は真っ暗な機内で何かを想っていた。





□アメリカ合衆国(ニューヨーク)エリア




「サヨコ、あれをどう利用する?」



「おそらく…私たちのパルスも船体からは見つけられないはず」



「固体同士の戦いって…ワケかい」



「たぶん相手は正面からは襲ったりしない…」



「あの頃も今もサヨコには勝てないさ、だから姑息な手段しか使わない」



「…それを逆手に取った」



「………まさか?シュンたちをオトリにしたのかい?」



「戦争は…もう終わらせなきゃいけない」フェイスシールドの奥でBaxの瞳が小夜子の固い意思を伝えている。






□ATI 機内




「どうなってる?」もはやアメリカ合衆国エリアでのBax たちの状況は全く知り得ない。



「大丈夫だよ、サイモンさん。バァバの作戦はきっとうまくいくから」



「戦闘よりも誘導するのが目的…か」朴は消失した早瀬を想い
ながら虚ろに言う。



「そう言えば…早瀬さんの乗ったトランスポーター機がもうすぐ接近して来ます」その機とATI をサムと二人で留守番するはずだったコトをサイモンが想い出した。



「心配いりません。あれは…私が見ます」実流樹が応えた。




















continued