□ATI 輸送機 内



施設に隔離された女性たちを救出するにしても具体案はなかった。静かな闘志に燃えた実流樹とサム以外は、結局事情に流されるように集まったメンバーでしかない。タイミングよく大統領から使命を請けた朴でさえ、セフス隊との交戦をイメージするごとに惨澹たる有り様を想い描いてしまうのだ。だからだろうか、自然にATI に乗り込むと皆、口数が減っていた。



「ダブジー(WG )周辺空域へはどう近付くんだ、“ようこそ”なんて出迎えるとも想えんが」サムは後頭部で両手を組みながら言った。



「こちらからわざと無防備に近付きます」Bax は背筋を伸ばし微動だにしない姿勢を保っている。



「何考えてんだっアンタ」



「ちょっと無防過ぎるでしょ?」朴はモニターで空路を確かめながら言った。



「捕まってしまったらどうにもならないです」あのサイモンも呆れた。



「馬鹿だね?捕まるんじゃない、潜入してやるんだ」



「潜入って?…誰が」朴は唐突な策にたじろいでいる。



オタツが腕組みして思案する風だ。



そこで初めて早瀬が前に出た。
「サムさんとサイモンさんは身内過ぎるからかえって身動きがとりにくいわ…」



「じゃ、誰が理想だ」Bax が算出した成功率に同感だったサムにも実際、正攻法の戦術プランはない。



「ワタシが行きます」Bax はすっかり自分の言葉を導き出せるようになっている。



「………なるほど」口には出さないが全員が納得した。



「私も行く」迷わず実流樹も手を挙げた。



「待て、お前は無理だっ」プロ兵士のサムとしては未成年者が戦場へ赴くなど賛成出来るはずもない。



「私は兵士ではないから武器なんて持ちません、誰の血も流させません」



「ミルキ、そう言ったって…相手がそうは想わないんだよ」



「いいえ、武器は使わせません」



「自信過剰じゃねぇか?なんかの能力があるかも知れねぇが、それなりの訓練を受けた連中だ、救出どころか捕虜になっちまうぜ」



「男は黙って聞いとくもんだ」オタツはくぐもった声で呟いた。


「チッ」サムが舌打ちする。



「それなりの策があるってことですか?」朴が言った。



「彼らにとって人間の女は戦闘対称外です。Bax のプランならより成功率は高いわ」



「アタシは二人を誘導する」オタツが口を開く。



「この輸送機はどうするんだ」



「相手空域に潜入する手前で滞空態勢のまま自動操縦に切り替え、ワタシと実流樹、オタツはセフス隊員が常駐する区域に降ります」



「私は全員を心身状態をサポートするわ」早瀬は勝算ありげだ。



「俺たちの役目は何だ」つっけんどんなサムが言う。



「サムと朴はもうすぐ到着する救出用の輸送機で待機、サイモンはエヴァーダAIとWG システムにアクセスし、 更新される戦闘状況を分析、ワタシたちに伝達してください」Baxは瞬きもせずに言うと、サイモンに向き直り 「ひとつ、サイモン…アナタに付け加えときます」



「ハイ?」



「オトリになって欲しいのです」



「オトリ?」



「これが最重要ミッションです」



「お願いします…サイモンさん」実流樹はサイモンの手を握った。



「短い間だ、攻めて来られてもアタシらが敵を倒す」オタツの言葉も力強かった。



「わ、解りました」サイモンは自らの重要任務に緊張を隠せずにいたが、取り敢えず士気を奮い立たせる為強く頷く。



それとは裏腹に「なんだよ、俺たちは送迎専用か」サムはぼやくと、自分に目を向ける早瀬に気がついた。




「輸送機のエーテル分離機には、私が寝てます」早瀬は自分の寝顔をサムに想像されるかと想うと気が気ではない



「あ?あぁ…」サムは妙なテンポで相槌を打った。



「一人残らず解放する為に輸送機は必要なんだ。命懸けで潜入しても肝心の輸送機に攻めて来られたら…どうしようもない」オタツが言った。



「そうだ…よな?重要に違いない」



「解りました。そ、そうです!サムさん、皆をちゃんと送り届けましょ!絶対に」



「お、おぉっ……お前、大丈夫か?」



「大丈夫です!ボクは」



「…………ホントか?」



「本当です!」サイモンは恐怖心を誤魔化すしかなかった。




ATI はWG 空域外周へ、滞空地点まで約1.5時間を切った。



















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