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「たまげたぜ…」サムはBax に見とれた。



「バァ…バ」実流樹が躊躇いがちに声をかけると、頬の皮膚が微かに動いた気がした。





パーソナルソースを完全にインストールし終わった彼女には、たどたどしくて覚束ない試作品のような危うさは感じられなくなっていた。



「………アナタ、進化してるの?」誰より驚いたのは早瀬だった。


エーテル体であっても、Bax から伝わるエナジー.レスポンスは凄まじく、セキュリティアを通じて採取されたデータはどれも未知数を示していたのだ。




「………アナタ?本当は何者なの」目の当たりにした現実は科学知識を遥かに超えている。



「ワタシは…ヒューマニティ.アンドロイド。ベーシックエックス02」




ヒトクローン技術、アンドロイド工学、エネルギー変換パーツの最大公約数が弾き出した奇跡は神の領域を侵し、終には何を残すのか。早瀬の背筋は凍るようだ。




「ワタシはワタシを造らせる為に貴方たちを使ったのです」Bax が言う。




「もう…お芝居や止めてください」



「これは現実」



「誰かが仕組んだんでしょ?アナタは操られてて」



「アナタの推測は外れてます」



「………バックス、説明しなさい」早瀬は科学者の威信をかけて命令した。




少し間をあけ、Bax は早瀬を見た。



「ワタシは死ぬ3日前に、ワタシ自身に関わるべきおおよその人材の思念を読み込んだ…そして、研究開発に携わる者全員を、ワタシ自身が選んだ」



「ワタシのパーソナルデータを記録してる?ってこと」



「いえ、全ては生前の出来事です。ワタシの死亡後、無用なデータは削除しました」




「わ、私、ちょっと混乱してるの」早瀬はあまりのショックに目眩を起こした。


「気の弱い娘だね、アンタは」オタツが嘆くように言った。



そのオタツに向かいBax は「待たせたね、セレーヌ」と声をかけた。




「うぅん…。よく帰って来た」



「ところで?俺たちゃどうすりゃいい」サムが訊いた。



「まず、敵がどれだけ存在するか把握すべきです」向き直ったBax が言う。



「何だよ、施設にはセフスが駐屯しているだけだ、大した人数じゃねぇ」



「敵?セフスの仲間に真っ向からぶつかる気ですか?」



「…セフスが限られた小隊配置だとしても、真っ向から勝負したのではこちらのダメージが大き過ぎます」早瀬は苛立ちを見せた。



「分かってんじゃねぇか」



「約1名でも侵入する確率は98%、研究施設の破壊、及びデータベース抹消成功率75%、被験者救出成功率37%、全プロセス成功率15%…」その時だけBaxの声は電子音のようだった。



「つまり…まともに帰れるのは、一人もいないってワケだな」



「……………」



「それでも行くか?お嬢ちゃん」



「行きますっ」



「ナンデ?何で死ぬ想いしてまで助けたいんだ?」



「アナタだって」



「アァ?」



「サムさんだって…一人でも行く気なんでしょ?」



「つまんねぇな、これじゃ俺が嘘付けねぇじゃねぇか」



「…その成功率は、あくまでもベースプロットです、勝算は別にあります」



「ベースプロット?」



「はい。」



「最初っからそっちを言ってくれよ」



「では、複雑な作戦を共有しなくてはならないので、ワタシのデータをミルキにバックアップしながら説明します」



Bax はそう言うと、実流樹の正面に立ち両肩に手を乗せた。実流樹はBax を信頼し身を任せていた。



Bax の両手が青色に発光すると指先から幾億のエレメントファクター(電子微生物)が光の糸になって実流樹の身体を這い回る。



「オイ、何が起こるんだよ」




「………………ミルキ」心配性のサイモンは実流樹を凝視する。





光の糸はやがてBax の指先と実流樹の頭部、脳神経を刺激するツボへコネクターの役割となるよう配置された。




「施設はWG 大統領官邸から北東部へ5800キロ地点、塀の高さは300メートル、素材はハイメタルゾーニア、壁の厚さは2.5メートル。施設は通常、地下に埋没していてサイズは判明していない」



「そりゃ、簡単にスキャン出来ねぇはずさ」



「施設と同じ高さまで掘り下がれば、可能ですきっと」サイモンは律儀にばらした。



サムは複雑な心境になった後「なぁ?早いとこ、そのベースプロットじゃない方を教えたらどうだ」サムは落ち着かない腰を上げて言った。




「早い話がレッドクロウをセフスにぶつけるのさ」



「そんな!レッドクロウに施設の場所を知られたらお仕舞いです」



「じゃ?アンタにいい考えはあるのかい」



「ない、です」



「なら、小夜子の言った通りにするしかないだろ」



「その作戦の成功率はどうなんだ」



「………50%から…85%、これは、あくまでも以前戦ったレッドクロウの戦闘データ」



「つまりは運任せ」



「ビースト、キメイラ…まだまだ全然見たこともないバケモノがいるはず」早瀬が呟くと、朴は相槌を打ちながら、恐怖のあまり生唾を飲み込んだ。





















continued