ブログネタ:寂しいと思う瞬間は?
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小学生の時、放課後。 首から家のカギをぶら下げ 友人と帰る下校の楽しさはキラキラとしていた。
それぞれの家が近づいて、バイバイと別れるその笑顔の充実感。
そして、ひとりになり誰もいない家の前に立ち、胸にぶら下がるカギを引っぱり出す。
ドアを全開、そこは一人きりのパラダイス。
空気の動いていない空間に、自分の体が入り込み波をおこす。
玄関から、机のある部屋にランドセルを放り投げる。
波打つ空気に、心地よさを感じる自分だけのパラダイス。
居間のテーブルには、親が書いた手紙とおやつが置かれていた。
父の字だったり、母の字だったり。
「 おかえりなさい 」 の文字と、おやつのメニューを書いた手紙。
カステラとバナナ、 叉はおせんべい。
その手紙は、毎日毎日その日に入った 新聞広告の裏に書かれていた。
その字を眺めながら、おやつを一気にほうばり、部屋の空気を散々揺らめかしたのち、誰かがもう来ているかもしれない公園に一目散に駆け出す。
揺らめいた空気は、留守宅へ入る子を心配する親の元へと、さざ波 小波 大波 となって、届けられていただろう。
もう帰った頃かな、もう公園で遊んでいる頃かな。
時が過ぎ、母が逝った。
父は仕事で、年の離れた姉は嫁いで家にいない。
一人きりの空間。 一人の夕食。
テレビから楽しげな声が響く空間。
スピーカーから流れる音波が 空気を鈍く揺らす。
鈍い揺らめきは、誰にキャッチされることもなく、部屋の隅で消滅する。
どこにも届かない波はいらない。
寂しさは、自分を通り抜ける波。
電気の信号が放つ音波を消し去ったなら、そこは静かな かつての自分だけがおこす波の空間。
どこか遠くの誰かに届く波。