ダイニングバー
「ときたま」
2話
お昼ご飯と酒と占い
5 占い師照美と猫のみこたの素性
照美と出会ったのは、
ダイニングバー「ときたま」の屋敷の裏の
虹色公園だった。
春の日和の穏やかな午後のこと。
私は、生まれた猫の町から逃げ出し、
3日目のことだった。
空腹に耐えかねて、桜の木の下で横たわっていた。
そのとき時、
照美は大きな紙袋を抱えて現れた。
買い物の帰り道。
桜の木の美しさに呼ばれて、ブランコに腰かけた。
なんとなく、木の幹に目をやると、私がいることに気がついた。
横たわっている私を恐る恐る撫でてみた。
「生きてる・・。」
照美は私を、抱きかかえると、店の隣の動物病院まで、走った。
「照美さん大丈夫ですよ。どこも悪いところはありません。
この猫ちゃんは、お腹がすいているだけですよ。栄養剤を飲ませましたから
今日は、静かに寝かせてやることです。明日お風呂に入れて、
猫缶を食べさせてあげてください。まだ、生まれて七か月ぐらいだと思いますよ。
親とはぐれたか、捨てられたかどちらかでしょう。」
(違うし、自分で逃げてきたんだもん。捨てられたわけじゃないんだもん)
「ねえ、あなた、逃げてきたんだね。良く逃げられたじゃん。」
(えー。猫の言葉がわかるの?このひとまさか、、。ありえない。)
「この人じゃないよの。照美よよろしくね。
あなた何て名前?」
(まさか、、。ことばわかるんだ、、、。あたちみこた。猫巫女のみ・こ・た。)
「みこたねーー。変わった名前だね。
まあいいか、みこた、これからどうするの
よかったら、店で、バイトしない
働かざる者食うべからずだからね。
何でもなんかするよ
うちに来るなら、仕事してもらう。
屋根裏にたくさんネズミが居て、大変なんだ。
追い払ってくれる代わりに、住んでいいよ。
あと、お客様がつてて来る猫を、おもりする
猫シッター。
土佐の鰹節おやつ付きでどうかしら?」
(ありがたい。でも、飼いネコというのは抵抗がある。リードとかされたらつらいし首輪も嫌だ。
でも、よく考えろわたち
土佐の鰹節おやつは、捨てがたい。う・・・ん。いかがしたものか、、、。)
「なにごちゃごちゃ言ってるの。さあ、来ないじゃ置いてくよ。
休憩時間が終わっちゃう。あーそれから、お店には、みこたを束縛するゲージも、
リードも、首輪もないよ。あなたは何時でも何処でも行ける。自由の身だよ。」
にゃーん。
私は、猫らしく、ひと鳴きすると、肩の上に飛び乗った。
それから、ここで皆の動きを観察しながら、
たまに来る猫共たちのここでの安全を
守る仕事をしているのだ。
おやつは食べてるかって?もちろん、、、。毎日もらってる。
お庭も、お屋敷も広いし、怒る人はここには誰もいない。
のびのび、私らしく日々暮らしている。
どうして、生まれてきた町を逃げ出したかって?それはまたそのうちのお楽しみ。
つづく。
心の処方箋。みこたも、「ときたま」で処方されたにゃん。
次回は、照美の素性を書くよ。