心の処方箋。今日も誰かが傷んだ心でやってくる。 | 心の処方箋

心の処方箋

日々、笑っていられますように…。なぜ私は生まれたの。何の為に…。

同じ時おなじ時間に、それぞれの時が流れる。

大切な時間の使い方を、、。

人は、人になるために生まれてきた、、。

そして、あなたは今、、、?

ダイニングバー

「ときたま」

1話

朝ごはん と 料理人海人

 

入り口のところには、白いイーゼルにメニューを書いたボードが置いてある。

 

各テーブルには、薔薇の紙には、本日のメニューが書かれています。

 

 

「いらっしゃいませ、おはようございます。

本日の朝食は、

和、洋、中華 の中から一つお選びいただきます。」

 

本日の和食

秋鮭の塩焼き。特製卵焼き。イカと大根煮物。

キャベツの朝漬け。あさりの味噌汁

玄米ごはんか白ご飯をお選びいただけます。

 

本日の洋食

ロールキャベツ。スクランブルエッグキノコソース

やきたてパン。柿埜のヨーグルト。

 

本日の中華

カニと卵のコーンポタージュスープ。

中華がゆ。ザーサイ。 

 

 

食後のお飲み物は、

コーヒー。紅茶。ジャスミンティ。ミルク。

アイスかホット。

オレンジジュース。リンゴジュース。野菜ジュース。

を、ご用意いたしています。

2種類までお選びいただけます。

 

窓際のお席に決まってお座りになる老婦人は、

OPEN当時からの常連さん。

 

しばらくお見えにならなかった。

いつもは、夫婦仲良くお見えになる。

 

今日は、おひとりでいらっしゃったみたいだ。

 

厨房の中から、店内のお客様の様子を見ていた海人は、

心なしかお痩せになった夫人を見て、珍しくホールに出た。

 

いつも奥様は和食、旦那様は洋食である。

しかし、今日のオーダーは違った。

一度も洋食のオーダーを彼女からは受けたことがない。

 

「いらしゃいませ、原田さま。お久しぶりでございます。

 おひとりさまでございますか?」

 

心配そうにのぞき込む海人に、

 

 「ひとりぼっちになっちゃったのよね。」

 

 窓の外を眺めながら彼女はささやいた。

 

「あ、、、。旦那様が、、、でございますか?」

 

「そう、花火の晩にね、急だったのよ。だからしばらく来られなかったの。

あなたのスクランブルエッグ、彼、大好きだったから、今日は代わりに食べに来たのよ。」

 

海人は、ご主人に大切なことを教えてもらった。

 

それは、まだ、この店に勤め始めたばかりの頃。

洋食のオーダーのスクランブルエッグの中に不覚にも卵の殻が入っていた。

料理人にはありえないミスである。酒の好きな海人は前の晩の酒がまだ残っていた。

 

旦那様は海人をテーブルに呼んだ。

 

「小さいことで、文句をいう訳ではないが、私は、

 朝からあなたのスクランブルエッグを楽しみ にここに、通ってきている。

 それは、 洋食なのにほんのり甘い卵の味が気に入っているからなんだよ!!

 あれは、日本料理の何か技を使っているに違いない。

 と妻と会話も弾んで楽しい時間を過ごせるんだ。中に入っている魔法は何なのか、

 いつか聞いてみようと話していたんだよ。なのに、、、。卵の殻とは、がっかりしたよもやもや

 きっと、腐ることがあって、あなたは、あなたにとって、

 一番大切なことをあなたは忘れているんじゃないかな。!

 

 八百屋さんも、肉屋さんも、カウンターで座っている営業マンも、、、

 みんな等しいことがある。

 神主や坊主だけが神様の御用をしていると思ったらおおきな間違いだよ。

 どこの場所でもみんな等しく生業は、神様の御用だと思って精一杯働く。

 大切なことなんだ。

 

 人が見ていないところにこそ気を配ること。自分の気持ちを立て直すこと。

 人はみんな、大切なことなんじゃないのかな。

 酒臭い姿で、味は決まるのかい?自粛することだね!!。」

 

 優しい声の鋭い瞳が海人の 心に刺さった。

 海人の頭から足の先まで電流がながれたようだ。

 確かに一流ほてるをやめて、バーの料理人になったことを、心のどこかで馬鹿にしていた。

 自分自身を馬鹿にしていた海人は、その時から好きだった酒をキッパリやめた。

 自分が自分を認める料理人になると決めたのだ。!!

 

 夏の終わりに旦那様は天に召されたそうだ。

 人から慕われていたご主人のお通夜の弔問  客は、明け方まで続いたという。!

 

 静かにティーカップを置いた老婦人は、海人に向かって、

 

「ここにもひとり主人を知っている方がいるわ。

 思い出もたくさんあるから、

 また、ここに来れば、

 あのときのあの人に会えるわね。」祈る人

 

ガーデンテラスの向こうに見える、噴水の傍で

静かにほほ笑む原田さまのお顔が見えたような気がした。羽根羽根

 

大きな古時計は、お昼を知らせる。

ピアノの音楽が聞こえてきた。ルンルン

 

心の処方箋。受け取ったにゃん。ラブラブ