〔あの娘はアルメか?〕
 
あの娘はアルメか?はじめての青いめざめに
花のように潔く散ってしまったのは……
目もくらむような都会の喧騒を匂わせておいて
一閃の火花のようにたちまち消え去ってしまいそうだ! 
 
美しい、美しすぎる!だが、漁師や海賊の歌に
あわせて舞ってくれるこの娘がいないなんて考えられない。
それで、最後の仮面のやつらは
またしても波に揺られて、夜会気分にひたっているしかないとは! 
 
                                  1872年7月
          ★
 
     ……Est-elle almée ?
 
Est-elle almée ?… aux premières heures bleues
Se détruira-t-elle comme les fleurs feues…
Devant la splendide étendue où l’on sente
Souffler la ville énormément florissante !
 
C’est trop beau ! c’est trop beau ! mais c’est nécessaire
— Pour la Pêcheuse et la chanson du corsaire,
Et aussi puisque les derniers masques crurent
Encore aux fêtes de nuit sur la mer pure !
 
                                  Juillet 1872.
 
          ★
 
 この短詩の美しさには、思わず息を飲まずにはいられない。アルメ(almée)というのは古代中東の舞姫のことだが、その蠱惑的な娘たちの幻想と、目前にひろがっている海景が交錯して、あたかも古代に織られたタペストリーの綾けさを思わせてくれる。
 
 《漁師や海賊》を、ランボオとヴェルレーヌと見たてている学者もいるようだが、そんな野暮な詮索はさて置いて、しばし、砂塵のかなたに見え隠れしている永遠に思いをはせてみるのもいいだろう。しょせんは、《最後の仮面のやつら》よろしく、さんたんたる現実のただ中に押し返されてしまうのがおちなんだろうけれど。