せつかちな質はいかにもうなぎ飯
おほうなぎ魚籠の底より這ひあがり
土建屋の叔父貴うなぎに錐を打ち
ひとかけも余さず土用鰻かな
白焼きの鰻つつつき闇深む 【笑い仮面】
子どものころから、うなぎは大好きだった。土建屋だった叔父が、仕事道具の錐で、仁淀川でとってきたばかりうなぎの頭に打ちこんで、赤錆びた包丁でいっきに皮をそいでゆくと、白というのか、薄桃色とでもいうのか、てらてらとひかる身があらわれる。そして、長い時間をかけて焼いてゆく。そのショウの非情さに圧倒されていたのかもしれない。
それから、京都のうなぎ屋で、うな重を食った。通信制の大学の夏季スクーリングのまっさいちゅうだったはずだけど、無性にうなぎが食べたくなってしかたがなかったようだ。「いまから捌きますので、1時間ほどお待ちいただくことになります」と言う京美人に「それはわかってます」と見栄をはり、ビールを飲みながら待ちに待ったあげくに食ったうなぎは、いなかで食ったうなぎとはひと味もふた味もちがったごちそうだった。あれ以降、うなぎらしいうなぎを食ったことがない。美味いうなぎに会えるのも、運のうちなのかもしれないと思っている。
以上、ぼくの、うなぎにかんする記憶録でした。
画像:蒲焼割烹 うな繁