せつかちな質はいかにもうなぎ飯
 

おほうなぎ魚籠の底より這ひあがり
 

土建屋の叔父貴うなぎに錐を打ち
 

ひとかけも余さず土用鰻かな
 

白焼きの鰻つつつき闇深む        【笑い仮面】

 

 

 子どものころから、うなぎは大好きだった。土建屋だった叔父が、仕事道具の錐で、仁淀川でとってきたばかりうなぎの頭に打ちこんで、赤錆びた包丁でいっきに皮をそいでゆくと、白というのか、薄桃色とでもいうのか、てらてらとひかる身があらわれる。そして、長い時間をかけて焼いてゆく。そのショウの非情さに圧倒されていたのかもしれない。

 

 それから、京都のうなぎ屋で、うな重を食った。通信制の大学の夏季スクーリングのまっさいちゅうだったはずだけど、無性にうなぎが食べたくなってしかたがなかったようだ。「いまから捌きますので、1時間ほどお待ちいただくことになります」と言う京美人に「それはわかってます」と見栄をはり、ビールを飲みながら待ちに待ったあげくに食ったうなぎは、いなかで食ったうなぎとはひと味もふた味もちがったごちそうだった。あれ以降、うなぎらしいうなぎを食ったことがない。美味いうなぎに会えるのも、運のうちなのかもしれないと思っている。

 以上、ぼくの、うなぎにかんする記憶録でした。

 

 

画像:蒲焼割烹 うな繁

 

 

 


 

 

 

 

 

 

茄子胡瓜みな食ひつくし梅雨明ける
 

つゆのあけ水族館の闇に入り
 

偏頭痛梅雨あがつてもどうにもならん
 

梅雨果てて街宣カーのかまびすし
 

啼く母に笑ふ子あるや梅雨の明け      【笑い仮面】

 

 

 やっとこさ、中国地方も梅雨明けしました(21日)。地獄のようなじめじめとはさよならだ。紫陽花もなめくじも生乾きの洗濯物ともしばらく縁ごが切れちゃいそうだ。今年の梅雨は、気のせいか、ひどく長かったような気がする。プチ熱中症みたいなって、いいかげんポンコツの脳天が悲鳴をあげていたし。

 さて、これからが夏の本番だ。殺人的な猛暑のなかで、どうやって楽しくすごしていけるか?それが目下の大問題だ。

 

 

画像:ちびたの気まぐれ日記 2

 

 

 

 

この家に主をらぬと守宮啼く

 

守宮去りあとは小雨の音ばかり

 

ガラス戸の外にやもりの夜の来たる

 

ありがたく壁虎の影に手をあはせ

 

恋をするつもりかやもりにじり寄り       【笑い仮面】

 

 

 おくればせながら、こんばんは。いや、こんにちは、なのかな?まあ、どっちでもいいや。それにしても今年の夏は暑いねえ。夏だから暑いのはしかたがないんだろうけど、この湿度のたかさはいったいどうしたもんだ。まるでサウナのなかにいるみたいじゃないか。そんなときは、おんぼろアパートの壁を散歩して、涼をとったり、ちょっとしたハンティングをしてすごすのが一番だね。

 おやおや、カメンのおっさん、万年床の上で長くなってるよ。はあはあ言ってる。プチ熱中症だなんて言って、のんきなもんだなあ。かわいそうだから、ガラス戸ごしにおしゃべりでもしてやるとしようかな。

 

 

画像:梶川 能一オフィシャルサイト