ステッキの先のあの山花盛り
花房のちみつな蘂に酔ひにけり
病室に花影あるべきほうに伸び
はつはなや遺骨の埃はたきたる
明日のことは知らぬがままに花ひらく 【笑い仮面】
今年も桜の花が咲いた。四囲が、薄紅色に彩られまさに春たけなわという風情だ。ただ、待ちに待ったとは、今年にかぎって(だろう)いいにくい。いったとしても嘘になる。ぼくは、おかんとまた二人でお花見をしょうけねと約束をしてたのに、おかんの死をもって、それはかなえられることのない悲願となってしまった。死は、季節のうつろいと同様に酷薄なものだからしようがないものだ。それはわかっている。わかっているけど、なにやらおかんを裏切ってしまったかのような気分がしてすなおに花をめでることができない自分じしんがえずらしい。
画像:ART-Meter




