2月14日 術後2日目 
一睡もできず朝になった。ICUでは常に視界内に看護師さんか医師の先生がいらっしゃってくださる。胸には遠隔心電図計が付いて、脈拍、酸素、他の数値も取られ、常時監視頂いている安心感もある。


またベッドが特殊で起こしたりできる他に、マットの部分部分が10秒おきくらいで少し陥没したり戻ったり常にごわごわ動く。床ずれ防止の一環だろう、すごいベッドだ。


そのベッドで寝ている僕は心電図計も含めると本当に管が一杯で












$笑いはいのちのえいよう 心臓病体験記





スターみたいだと言いたかったが現実は腕に集中していない。
痛々しいだけだ。


水を飲んでいい事になったが、飲み込むのは情けないくらい少しずつしかまだできない。

朝、寝たまま体重を測られ、痰や体内に溜まった水?のせいで3kg程重くなっていたようだ。看護師さんが少し驚いていた。

手術翌朝から流動食が出る話を聞いていたが、回復が少し遅いのか朝は出なかった。


田中先生がいらっしゃった。田中先生の笑顔には入院中本当に深いレベルで元気づけられた。

「Jさん、ここまで順調ですよ。首の管を抜きますね」

「ありがとうございます」

声が全く出ないので、ひそひそ話の感じというか、口を動かすだけに近い。

首の左側と右側に栄養を送る管が計2本刺さっていた。左側のテープを剥がし、糸を切る。管は糸で縫いつけられていたらしい。痛くないがハサミを当てられるのは少し怖い。抜かれたのを見るとまさに管と呼べる太さだった。ガーゼを貼られて作業は終わった。

一歩普通の人間の体に近づいた。

「Jさん、ちょっと立ってみましょうか」

先生に言われ、ベッドを90度まで起こし、手すりに手を掛け、おそるおそる足を脇から降ろす。手術からまだ丸24時間経っていないが立つ事が出来た。ドレーンの容器がアクセサリーのように右脇から垂れるのもご愛嬌だ。

「やりましたね、Jさん」

「ありがとうございます」

すぐにまた横になったが、その後も時折少し体の向きを変えたりベッドを起こしたりした。ただ枕の位置を変える、こんな事がとても難儀で、頭は浮かせられないし、右腕を頭上にやろうとすると傷が痛む。傷口が裂けて開くんじゃないかという恐怖心が常につきまとう。また右脇のドレーンにはあまり触れたくない。中身を空にする時痛いし、極力刺激したくない。


続いて左手首の動脈の針も抜かれた。剣道の小手のようなカバーも外され両腕が一応自由になった。また、翌3日目の午前中にICUを出て個室に移る旨の説明があった。2日目の僕はまだとても元気とは言えず「こんな状態でICU出て大丈夫でしょうか」と看護師さんに泣き言を言ったりしたが、驚くべき事にその後半日単位で体調が良くなるのをはっきり実感した。これは間違いなくダ・ヴィンチの恩恵だと思われる。


「Jさん、お昼は食事が出ますからね」

看護師さんが教えて下さった。



バレンタインデーの昼、ついに術後初の食事を迎えた。

プレートに載せられたお椀2つに無色透明に近い完全液体が入っていた。流動食である。


スプーンですくって口にやる。

あ、おいしい。具0のぬるめのスープだ。

ゆっくり少しずつすする。結局5分の1くらいしか飲めなかった。食後の飲み薬も気管に詰まらないよう慎重に飲んだ。


ただ、この完全液体なら腸に溜まらなさそうだと思った。

できればオムツにお土産を残すことなくICUを後にしたい。










バレンタインデーにチョコを貰えずに、オムツにチョコ色の物を残したら、モテない男のテロだと思われてしまうかもしれない。





また、点滴のせいもあってか1日中沢山のおしっこが出たようだった。看護師さんが見に来てくれる度に尿管を右に左に傾けて、管に滞留するおしっこをタンクに落としていた。

ちょろちょろという風情のある音がずっと鳴り響く。僕は体を起こしてそれを眺めた後、看護師さんが入れてくれていた水差しの水をすすった。













「結構なお手前で」(心の声)



ラッキーICUボーイ流茶道
である。






夕飯は早くも全粥(かゆ)が出された。

想像以上においしく、むしろ健康な時でもウェルカムというか、東京にいた時の僕の食事のクオリティを上回るかもしれないレベルに達していた。

全粥に敗北を喫する僕の食生活のレベルが低いのか、金沢大学病院の全粥のレベルが高いのかを結論づけるのは今の僕には酷という物だろう















穀物だけに。 ドヤァ









【天声人語 第四十八回】 金剛力士さんに感謝しなさい

貴様たちも一度は看護師さんにお世話になる時があるでしょう

私にはわかります。

看護師さんを怒らせて万が一、金剛のように睨まれても失禁してはなりません。

看護師さんがそれを片付ける事になってしまいます。


ラッキーブッダボーイJ




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皆様大変お世話になっております、Jでございます。いつもありがとうございます。ICUってIntensive Care Unit の頭文字らしいんですが、I see youが転じてても素敵だなって、Iが医者や看護師で、youが患者です。と、気取って書いてから検索したら、そんな事はとっくの昔から言われているんですね。俺おせえええええ。