鉄道と道路を巡る奇妙な言説について | Study Hard

鉄道と道路を巡る奇妙な言説について

 たまには内容とタイトルを合わせてみる何か。

 鉄道を巡って「赤字だから云々」という論点が単独で出て来るのはいつ見ても解せない。鉄道だけでなくMass Transit全般でもそうだが。

 一般に鉄道は運賃収入を得ているので赤字黒字のイメージが比較的掴み易いし、なんせ鉄道会計という分野さえあるのだから計算方法も洗練されている。
 一方で道路はどうだろうか。赤字の道路と言えば、多くの人が思いつくのは誰も使わない高速道路かもしれない。しかし日本の道路のほとんどは無料で通れる。しかもそういった道路は自動車重量税等々要するに税金で維持されている。

 それならば、赤字だからという点のみを突いて鉄道が要らないとか造らなくていいという話が許されるなら、ほとんどの一般道だって大赤字なんてレベルじゃないほどの赤字なんだから潰せという話にはならないのだろうか。だって全額税金で補填してるんだよ?
 というのは冗談だが、どうにも世の中は少し経済学や会計学に対する理解が足りないために「赤字なら要らない」という単純な理屈を述べる人が多過ぎるような気がしてならない。ところで「赤字なら要らない」という論はまったく正しい、問題は「どこをどう計算して赤字なら何が要らないのか」ということだと理解できない人が多いのだ。

 細々説明するのも面倒なので大雑把に言うと、道路や鉄道を行政が整備する場合には主に2つほど動機があるが、そのどちらでもないことをきちんと示せないとまず反対理由にもならない。
 だから「赤字の鉄道を造るな」という主張が成り立つには、「生活に(最低限)必要かつ民間では整備されないもの」でもなく「整備によって高い乗数効果が得られるとは言えない」ものであることを説得力を持って説く必要があるわけだ。
 そしてもう1つ究極の反対理由は「そんなことに力を入れてると財政が破綻するぞ」である。もう少し言えば"Sustainabilityが失われてHard Landingするぞ"ということだ。ここまで来ればもう鉄道なんか造ってる余裕はなくなる。但し、道路も整備維持する余裕がなくなるが。

【具体例】
 それで川崎地下鉄に関して適当に考えてみる。

・生活に必要か
 当該地域は鉄道利用には相当に不便なのだが、生活が困難なわけではない。局地的に車社会になってるだけ。最低限必要というほどでもなく、あった方が確実に便利という程度のもの。

・民間では整備されないのか
 南武線なんとかしてくれよという話は置いておくとして、武蔵野線の旅客併用が一番現実的だ。一番現実的な案でこれでは……

・乗数
 モノの話では2ぐらいだった。しかし計算方法が明らかでないので怪しい試算だが……
 今どき東京圏の旅客鉄道に乗数効果を期待するのもどうかと。

・採算
 それでやっと採算の話だが、最新の交通モデルに従って試算したとか何とか言ってるがどうにも胡散臭い。実は個人的に市長室にモデルの詳細を教えてくれと言ったが無視された、というのは別にどうでもいい。
 日銭が稼げる(俗に言う営業利益)かどうかだが、そんなん俺に聞くなという話だ。自分が使うとしたら新百合ケ丘経由で小田急線に乗るときぐらい。

・結果
 市民アンケートの結果は財政が厳しいときに造るなということで、計画は凍結と相成っている。要するに川崎市の財政は上のような議論をしているようなレベルではないのだった。

・道路族マジ痴呆
 赤字鉄道なんか造らずに道路を拡げろと言っている道路族が川崎にもたまに居るが、道路に回すカネがそんなにあるなら川崎地下鉄も出来てるって話だ。赤字なのは川崎地下鉄でなくて川崎市なのだと気付いていない辺り痴呆症かと思う。

【結論】
 戦略移動>道路移動>不整地機動