onnna
突然、ぽかぽか陽気になり、
ダウンジャケットの人と
タンクトップ一枚の人がすれ違うNY。

薄着になると、胸に目立つのは…
噂のつけ乳首じゃなく、ID。

オフィスビルに入る際には、改札口みたいに
IDのバーコードを読ませたり、
セキュリティの人にID見せたり……というのがフツー。

田舎の中学生じゃあるまいし、
名札を首からぶら下げて通りを歩くなんてサイアク…!
個人的にはそう思う。

犬の鑑札じゃないんだから、
顔写真入りの社員章なんて、
どんなおしゃれな服も台無しになる格好悪さ!!!と思う。
ま、セキュリティ強化っていうのは、わかりますけど。

なんちゃってOLのノラ編集者の場合、
受付で写真入りの身分証を見せ、
「ヴァーティカルに行きます」と告げ、
入国審査のようなカメラで顔写真を撮られ、
紙でできたビジターIDを発行してもらう。

…が、われながら感心するほど、英語が上達しないわたし。
「RとL」はもちろんダメ。
「TH」もだいたい、聞き返される。
おまけに、「BとV」を聞き分けてもらうのも、大変であることが判明した。

「Vertical」と言うと、
「ブラジル輸出入会社」
「バンク・オブ・アメリカ」
のビジターIDが出てくるのはザラ。

周りの白い目を浴びながら、受付に食いつくノラ編集者。
「パブリッシング・カンパニーでえ~。
ばーてぃかる、です。ヴぁーてぃかる、スペルは、ぶい…」
と言い始めたら、つい「バケーション」のスペルを言ってしまう。
なぜだよ、自分…。

こんなに苦労して入手したID。
なのに、うっかり忘れてコーヒー買いに行ったりしてしまう。
ああ、やっぱり首からぶら下げるべきは、わたしなのか?

再び受付に向かう。
「わたしは~、ヴァーティカルの手伝いなんですが~IDを机に忘れて~」
「キミの顔は覚えたよ。バケーションでしょ。
ハイ、通りなさい~。Vacationちゃん」

結構、NYのバーの店主と顔見知りになったが、
顔パスは、このビルが、初めてかもしれない。