麻子と真司、2人が中学生3年生になる前の春休み。桜が満開の桜広場。


6時の桜の木の下のベンチで、


先に来た真司が横になって居眠りをしていた。

 

ポカポカとした心地よい日差しが差し、


小鳥がさえずっている。


しばらくしたら、風とともに桜吹雪が舞った。


真司の頬が風に撫でられて目を覚ました。





そこに、一瞬、桜広場なのに、


港町中学校の桜の大木の下で、


新しい制服を着て短い三つ編みにした


麻子の姿がよぎった。




えっ?、真司が目をこすり、もう一度見ると、


そこには、ランチバスケットを下げた麻子が


真司の顔を覗くようにいた。


「びっ、びっくりした」


今日の麻子は


三つ編みではなく髪をほどいていた。


「夢見てたの? 驚いてるみたいだから」


「まあ、そんなとこ。何故か、


入学式の時の麻子が夢に出てきた」


「私が真司と初めて話をしたのは


中1の秋だったと思うけど」


「そうだったな。でも、俺は・・・。


まあ、いいや」


真司は入学式のあのショットは


心の抽斗(ひきだし)に仕舞っておこうと


思った。


「お昼は何だ?」


真司はランチバスケットを見た。


「お昼はね・・・」


麻子はお弁当を出しながら、


楽しそうに話出した。


真司は入学式のあのショットの頃から考えたら、

今、麻子と2人でお花見しているなんて


考えられなかったが、


受験生になる前の束の間の休息だなぁと


微笑んだ。