年明け。


シーサイドタウンから自転車で帰ってきた



真司が自宅近くで、



麻子が行ったり来たりしているのが



目に入った。



(何やってんだ?)



真司は自転車で麻子に近づいた。



「探偵さん、この家には今誰もいませんよ。



それとも、あなたは泥棒ですか?」



ハッとして、



麻子が振り返ると



真司が怪訝な顔で麻子を見ていた。



「何してたんだ?」



「え、えっと、、、」



「?」



「これ!」



麻子は真司の前に、



手にしていた紙袋を差し出した。



「お礼の帽子よ」



「帽子、、、」



真司は2学期の修了式の日のことを



思い出した。



「わざわざ、編み直してくれたのか?



それで、ここまで、、、」



麻子を見ると、



頬がほんのり赤く染まっていた。



真司は推理した。



(お礼だって言ってたし、



1月で寒いから、



頬が赤くなっているだけかも知れない)



真司は少し期待したけど、



そう考えたら、妙に納得した。



でも、寂しい納得だった。



「じゃ、じゃあね」



麻子はそのまま、



桜広場に近い自宅に帰るために



バス停に向かった。



真司は探偵志望だったが、



この頃は全く女心がわかっていなかった。



でも、紙袋から毛糸の帽子を取り出すと



早速被った。



毛糸の帽子はスゴく温かかった。




これはまだバレンタインデーも迎えていない麻子と真司2人の物語。