花火大会当日。
麻子の母「麻子、その浴衣とってもよく似合うわよ」
麻子は、先日、母とセンター街に一緒に出掛け、
浴衣一式をそろえた。
今麻子が着ているのは、
紺地に水色がかった青と
紫がかったピンクの大柄な朝顔の花が
散りばめられている浴衣だ。
麻子は髪もアップにしている。
ピンポーン!
麻子の母「あら、真司くんね」
2人の仲は麻子の母も大賛成だった。
「気をつけて、行ってくるのよ」
母の声を後に、麻子は玄関の扉を開けた。
「あ・さ・こ、、、」
外に突っ立っていた真司は
それ以上何も言わずに、
門を出てバス停目指して歩き出した。
麻子は沈黙も間が悪いので、
ホームズの話を始めた。
「・・・、だから、ホームズさんにとっては、
ブナ屋敷のバイオレット・ハンターではなく、
ボヘミアの醜聞のアイリーンだったのよ。
特別な存在は」
「ねえ、真司、聞いてる?」
隣を黙々と歩いていた真司は、
麻子の右手をぎゅっと握り、
手を大きく、ブラブラ何度も振り上げた。
「ち、ちょっと、真司、手が、、、」
真司は麻子の右手を離そうともしなかった。
その顔は、花火が開いたような満面の笑顔だった。