最近、ある事情によりポスティング作業を行うことになりました。


ある特定のエリアに一軒一軒まわって、チラシを配布しますが、

この一日がかりの作業は予想以上に大変かつ興味深いものがあります。


私はポスティング作業は初めてあり、

特に東京の密集地帯では、狭い範囲ながらも自分がどこにいるのか

一瞬分からなるほどです。


道路に面していない四方を住宅で囲まれた家も多く、

その際はどこかしらの細い道を通っていきますが

無事にたどり着いたとしても、ポストも表札もない場合も多いのです。


また、一軒一軒まわるごとに、空き家と思われる箇所も多く存在しています。


家の周囲には雑草が生い茂り、うっすらと透けて見えるドアや窓のむこう側には

大きな荷物が置かれています。


また、建物や何らかの工作物やガラクタ(?)が隣の家に傾いているところもありますから、

もしかすると隣人関係でもめているのかもしれません。


今回もそのような空き家と思われる家も何件もあり、

どうしようか迷っていたところ、近所に住んでいるらしき人から声をかけられました。


「そこの人、もういないよ!」


親切に教えてくださいましたが、その方は亡くなられたのか、

あるいは他の土地に住んでいるのかは定かではありません。


少なくとも空き家か、それに近い状態なのでしょうね。



私が以前、訪問介護の仕事をしていた際には、

古いアパートに住み、独居暮らしをされていた高齢者は多くいました。


昭和の半ば頃に建てられたのでしょうか。


○○荘という名前であり、建物内に共同廊下があり、鍵は簡易的なもの、

風呂なしのトイレは共同といったような、外から見ると、

人が住んでいるのか分からないほどでした。


さらにエアコン、洗濯機やテレビやガスコンロもなく、ご本人は長年そのような環境で

暮らしていたために気にもしないようでした。


娯楽はどこかからか仕入れてきたエロ本だけだったような気がします。


いざ、そこで介護をしようにしても大変不便な場所であり、

また、衛生的にも劣悪な状況で、すでにそのアパートには

その方が最後の一人でした。


最終的にはそのアパートが取り壊されるということで、

その方にはワンルームマンションに移ってもらいましたが、

そうしたこともこのような仕事をしていなければ、気にもとめません。



ポスティングの際に、建物を一軒一軒目にするたびに、

どのような生活の実態があるのかを想像したり、迷ってしまうほどの建物密集問題を実感し、

また、家の前に放置されたゴミ(がらくた)を見ては、様々な潜んでいる問題を感じ取りました。


このポスティングを始める前は、地図を見ながらおおよそ何件くらいで、

距離にしてどのくらいか、などと気楽に考えていました。


しかしながら、自らの足で歩くことにより、様々な思い出が蘇り、

疑問点が湧きだしてきます。


「上から物を見て、分かったような顔をするなよ。

足元である現場をしっかり見なさい!」


このような言葉を誰しも聞いたことがあるのではないでしょうか。



ある友人に私がポスティングを手伝うという話を事前にしました。


「おお、それは面白い、いい仕事だな!

知らないことが色々と見えて、よい経験になるに違いないよ。」


本当にその通りでしたね。

たくさん蚊に刺されましたが…。