池田宏之(m3.com編集部)  4月26日(金) 配信
 厚生労働省の「救急医療体制等のあり方に関する検討会」(座長:有賀徹・昭和大学病院院長)の第3回が4月25日、開かれた。初期救急医療や小児救急医療の現状が議題となり、小児向けの電話相談「#8000」の相談員の質を、疑問視する声などが上がった。

 厚労省医政局指導課は、初期救急医療機関の現状と問題点を報告した。2011年度の救急車の出動件数は約571万件で、過去10年間で約131万件、約30%伸びている。搬送人員の内訳としては、軽症患者が半数を超えているというデータを示した。現在、在宅当番医制を導入しているのが、全国で630地区、休日夜間急患センターを運営しているのが556カ所で、ほぼ横ばいの状態。両者で2011年度には約622万人を受け入れているが、365日24時間対応している地域から休日のみの対応まで、ばらつきがある現状を報告した。

  厚労省は、「軽症患者をさらに初期救急医療機関で担えるようにならないか」と問題提起。これに対し、市立堺病院副院長の横田順一朗氏は、「救急車で運ばれてくる患者を、『救急の患者』として計上する病院もあるだろし、『時間外の患者』として計上したりされているところもある」と述べた。日本医師会常任理事の石井正三氏も、「DPCの制度は、『救急の患者』で計上した方が良い制度になっている」と指摘し、データの前提を疑問視する意見が出た。

 安心を求めて、高次医療機関に行きやすいとされる患者の行動も議論となった。相沢病院救急総合診療科統括医長の許勝栄氏は、「ウォークインの患者は、自身に不安があって、いざとなったら入院できるところに来る」と指摘し、高次医療機関と離れた場所に、初期救急医療機関を作るのではなく、既存の高次医療機関に、地元医師会から応援を出し、トリアージ等を受け持つのが効率的との考えを示した。

 小児救急医療体制の現状についても議論となった。厚労省医政局指導課は、2010年の小児科医師数は1万5870人で、10年間で増加傾向にあることを報告。小児救急患者の多くは入院を必要としない軽症患者であることを報告した。休日夜間帯の家族判断を支援する「#8000」についても言及され、現在、全都道府県で事業展開されているものの、深夜帯では40%、休日は20%以下しか運営されていないことが報告された。『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会代表の阿真京子氏は、「同じ症例でも、人によって、救命救急センターへ行くことを指示したり、昼間にかかりつけ医に行くように指示したりすることがあり、ばらつきがある」として、相談員の質を一定に保つ必要性を指摘した。厚労省は、家族の実際の対応まで含めて、「#8000」の実態調査を進めていることも明らかにした。

 周産期・母子救急の議論では、診療所等から、総合周産期センター等に転院搬送された患者が、中等症になって搬送元に返す際、救急車使用が利用できる支援がないことが問題視され、有賀氏は、「医師が付いていくなど、引き続き医療が必要なこともある。移動も含めた社会的支援を考える必要があるのではないか」と指摘した。