共同通信社  4月25日(木) 配信


 中国での鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の感染拡大と野鳥の関係などについて、中国政府直属の研究機関、中国科学院動物研究所の何宏軒(か・こうけん)研究員に聞いた。(北京共同=渡辺靖仁)

 ―現在の感染状況をどうみるか。

 「最初の感染者が発病してからおよそ2カ月たった。感染者数をみると、大規模な流行ではない。ただ、鳥に対しても人に対しても(体内に入ると)非常に適応性の強いウイルスで、警戒は怠れない」

 「高齢の感染者が多い傾向がある。感染しやすいかどうか(高齢者の)体質と関係しているかもしれない」

 ―感染ルートの解明は。

 「(H7N9型の人への感染)発覚後、(感染多発地域の)上海や浙江省の渡り鳥生息地で千以上の野鳥のサンプルを採取した。H7N9型ウイルスは検出されなかったが、血清の抗体検査でH7の陽性反応が出た。過去に(H7のウイルスに)感染したことを意味し、野鳥が(H7N9型を)広めるのに何らかの働きをした可能性はある」

 ―野鳥が関係しているのは間違いないのか。

 「関係があるかどうかにはさらに検討が必要だ。感染源を探るだけでなく、新たなウイルスの発生を検知するためにも、野生の鳥類への監視は今後とも重要だ」

 ―江蘇省南京ではハトからも検出され、国内で野鳥を駆除するべきだとの声もある。

 「その必要はない。(人間に感染するまでの間には)非常に複雑な過程がある。野鳥から人間に直接感染する確率は極めて低い。人間と野鳥との接触は、家禽(かきん)と人間、家禽と野鳥の接触に比べれば少ない」

 ―感染拡大防止のために何が必要か。

 「人間が野鳥の生息地に入ることを減らし、野鳥との接触の機会を減らすことだ。生息地を保護することは、野鳥が人間の生活圏に入ることを防ぎ、人間との接触を減らすことにもなる」

 ―中国の野鳥監視体制の現状は。

 「2003年に流行した新型肺炎(SARS)や、05年の中国・青海省の青海湖でのH5N1型ウイルスによる渡り鳥の大量死を受け、野生動物の疫病監視を重視している。レベルは他国と比べても遜色はない」

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 何宏軒氏 1968年生まれ。河南省出身。中国科学院動物研究所研究員。国家野生動物疫病研究センター研究員。