共同通信社  4月24日(水) 配信


 中国で急速に感染が拡大しているH7N9型鳥インフルエンザウイルスの日本侵入に備え、厚生労働省は24日、H7N9型を感染症法に基づく「指定感染症」とし、強制入院や就業制限などができるとする対策を決めた。政府は感染症法の政令や、診察や検査を検疫所が実施しやすくするのに必要な検疫法の政令を改正し、5月上旬の施行を目指す。

 同日の厚生科学審議会感染症部会が承認した。

 感染症法では感染症を危険性に応じて五つに分類しており、H7N9型などの鳥インフルエンザは下から2番目の「4類感染症」。指定感染症とすることで、東南アジアを中心に広がっているH5N1型が含まれる「2類」と同様の対策を最大2年の期間限定で取ることができる。

 2類に直接指定するには法改正が必要なため、厚労省は早急に決められる指定感染症の枠組みを活用するのが適切だと判断した。

 感染症法の政令改正後は、都道府県知事が患者や感染した疑いの強い人に入院を勧告でき、拒否すれば強制入院もあり得る。対象者が接客業や食品加工業といった、感染を広げる可能性の高い仕事に就いていれば休業を指示することができ、従わない場合の罰則規定もある。

 指定感染症の枠組みが使われたのは、これまでH5N1型と新型肺炎(SARS)だけで、どちらもその後、法改正で2類感染症に指定された。

 2009年に豚インフルエンザとしてメキシコで発生し、世界的に大流行したH1N1型は当初から患者の隔離や停留が可能となる「新型インフルエンザ」として対策が取られた。

 政府は、H7N9型が人から人へ容易に感染する新型インフルエンザに変異したと判断すれば、感染症法で規定する新型インフルエンザ対策に加え、今月13日に施行された特別措置法で対応する。

※H7N9型

 鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスで、人への感染が中国当局の3月31日の発表で初めて明らかになった。鳥では症状は重くなく公衆衛生上の危険性は低いとされてきたが、中国で確認された感染者の約2割が死亡するなど人で重症化することが判明。世界保健機関(WHO)は、現段階で人から人への持続的な感染は確認されていないとしているが、そのように変異して世界的大流行になることが懸念されている。中国政府は生きたニワトリなどを扱う市場を閉鎖するなどの対策を強化している。

※指定感染症

 感染症法は感染症を危険性の高い順に1~5類に分類し、あらかじめ対策を決めている。指定感染症はこれとは別に、生命や健康に深刻な被害を与える恐れのある緊急時に迅速な対応をするため指定する。致死率の高いエボラ出血熱や新型肺炎(SARS)などへの対策と同様の措置が法改正を経ずに可能となる。措置は感染症ごとに指定に当たり決める。指定期間は最長1年間で、必要に応じて1回に限り1年の延長ができる。