薬局新聞  4月17日(水) 配信


改めて「ホルモン補充療法」を見直す時期に 大東製薬工業・福井社長が講演

 今、ホルモン補充療法を見直す機運が高まっている。特に年齢を重ねた女性にとっては更年期障害をはじめ、肌の衰えや性生活の減退、骨量の低下など、ホルモンの減少がもたらす日常生活の質の低下は、女性の輝きに直接影響することが指摘されている。ひと昔前までは、ホルモン補充をイコールで“男性のいかがわしいジャンル”として花街周辺などの専門店で販売されるケースが圧倒的に多かった。しかし、時代は変わりナイトライフに用いられることはもちろん、研究の成果によりホルモンがもたらす総合的なQOLの向上は、高齢社会のスタートラインに立っている今日の日本においては、むしろ薬局・薬店などで専門家により適切に活用されることが求められているアイテムと言える。ここでは浅草薬剤師会主催のセミナーで講演した大東製薬の福井厚義社長の考えを要録。ホルモン補充療法に対する捉え方を改めたい。

専門家による適正使用で健康増進へ

 ホルモン補充に関しては、ネガティブなイメージがあることは否めないと福井社長は率直に認める一方で、「強精剤ではなく、生活改善薬としての役割が求められている。ホルモンは高すぎても低すぎてもリスクになる恐れがある成分。だからこそ、専門家の適切なアドバイスによる使用で、健康面でのさまざまなリスクを回避できる」と強調し、むしろOTC薬による短期的かつ定期的なホルモン補充が、健康増進をはかるものになると訴える。

 現在、ホルモン補充療法は性機能をはじめさまざまな診療科目によって用いられており、産婦人科で女性の更年期障害を筆頭に性交痛、性欲減少などで使用されるほか、泌尿器科や内科、アンチエイジング外来などでも使用されている。しかしながら、強精剤・アダルト雑貨などと同様に刺激性を追及するための製品との誤認も根強いのが現状であると説明したうえで、「セックスレスや少子化など性機能障害に対する潜在的なニーズは確かにある。またOTC薬ということがメリットになっている部分もある」ことを述べ、正しい知識を持って向き合うことが重要であると語った。

 ホルモンが減少することの影響は女性で「更年期障害」、「骨量の低下」、「動脈硬化」などがあげられ、男性でも男性更年期障害(LOH症候群)、EDなどが代表的な症状として発現する。ホルモン補充療法の際、薬剤師が丁寧に説明する必要があるのが経皮吸収であるところという。福井社長は「経口や注射でホルモン剤が投与されると、腎臓を通過してから体内に取り込まれるため、ホルモンの血中濃度が高くなりすぎて心臓に負担をかける可能性がある。しかも現在でも医療用製剤での経皮製剤はないため、OTC薬による経皮吸収・局所投与をよりピンポイントで補充することの意義は大きい」と語る。

更年期障害などホルモンOTC薬に高い注目

 男性・女性ホルモンOTC薬は現在医療機関で臨床実験が行われており、陰部に直接塗りこむという投与方法には医学方面からの注目も高い。女性ホルモン製剤は「更年期障害に悩むものの、病院受診をためらっている場合」に適しており、男性では加齢により総合的な意欲が減退している更年期障害は、テストステロンが減少して発症することもある。「疲れが抜けなかったり眠れない、性機能の不全など生活のあらゆるシーンの意欲が低下する。歳を取ったものとして片付けるのではなく、QOLを高めるためにもテストステロンの補充を呼びかけて欲しい」とまとめる。既に同社製品の臨床現場で広まりを見せており、日本性機能学会や日本アンドロロジー学会などでの発表をはじめ、LOH症候群の診療の手引きにも製品が掲載されており、医療用医薬品にはないメリットに注目が集まっている。

 日本人は貞操観念が根強く、製品の有用性に関わらず訝しげに同製品群を見ている一面は否めない。しかし、現場からの確かなニーズが示されているのもまた事実だ。福井社長の講演を熱心に聞き入り、講演後に詳しく説明を聞いていた薬学生のコメントが印象的だった。「大学ではこうした特徴のあるOTCに関する説明を聞いたことがなくて大変貴重だった。今後高齢社会を生きるうえで、こうしたアプローチと薬があることを知れたことは本当に勉強になった」。