共同通信社 9月13日(木) 配信


 原告側と国が昨年、和解基本合意したB型肝炎訴訟で、感染拡大の原因とされた集団予防接種の注射器使い回しについて、厚生労働省が初の全国実態調査に乗り出すことが12日、関係者への取材で分かった。

 調査対象は国が予防接種を義務付けた1948年から、使い回しを禁じた88年までの期間。年月が経過していることもあり、一連の訴訟でも各地の使い回しの実態や経緯は十分解明されていなかった。

 和解基本合意を受け厚労省はことし5月、被害の検証などを目的に、専門家や被害者らでつくる検討会を設置。検証のためには実態調査が必要と判断し、調査を担当する研究班を設けた。

 調査は自治体や医療関係者へのアンケート方式で、研究班が10月にも調査票を配布する。自治体には、当時の予防接種の手順を示す資料の有無を確認。医療関係者にはB型肝炎や使い回しの危険性に関する当時の認識も尋ねる。

 北海道の被害者が起こした訴訟で最高裁は2006年、注射器の使い回しによる感染の恐れを予見できたのに、国が放置していたと認定。一審の札幌地裁で北海道内の保健師が「1本の注射器を5、6人に使っていた」と述べた証言などが根拠とされた。

 しかし、その後各地で起こされた集団訴訟では、国は使い回しについては事実関係を争わず、和解基本合意で終結したため、使い回しの実態についての具体的な事実認定は行われなかった。