専門医認定の第三者機関、来年度の設立目指す
質の担保、医師の地域・診療科偏在解消が目的
2012年7月6日 橋本佳子(m3.com編集長)
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7月6日の「専門医の在り方に関する検討会」(座長:高久史麿日本医学会会長)の第9回会議で、厚生労働省は「中間まとめ」(案)を公表した。
現行の学会認定の専門医制度から、中立的な第三者機関が認定する制度への変更のほか、現在の18の基本領域の上に、サブスペシャリティの専門医を取得する二階建ての仕組みとし、その基本領域の一つとして、「総合医」(または総合診療医)の追加を提言したことが特徴。さらに医師の地域および診療科偏在の解消に向け、全国と都道府県レベルで、各診療領域の専門医の養成数を管理・調整する方針を打ち出したことも、注目点だ。
これらの考え方は、日本専門医制評価・認定機構がこれまで検討してきた路線と一致している(『今の専門医制度は玉石混交』を参照※2)。
厚労省は、今後の検討スケジュールも提示。2012年度後半に専門医認定や中立的な第三者機関のあり方などについて検討。2013年度に第三者機関を設立し、各領域の基準作成、研修プログラムの設定、2014年度に研修プログラムの定員設定後、専門医研修プログラム希望者の募集を開始、2015年度に後期研修を開始する医師から、新専門医制度を適用する方針。
日本専門医制評価・認定機構理事長の池田氏は、「今検討しているのは、10年、20年後を見据えた制度であり、2015年度に新しく研修を始め、新たに専門医を取得する若い医師を対象にした制度。既に専門医を取得した医師については、別に検討しなければいけない。専門医の更新の際に新しい制度に移行するなど、幾つかの方法が考えられる」と説明。
厚労省は次回8月の会議で、「中間まとめ」を確定する予定。厚労省医政局医事課長の田原克志氏は、「中間まとめでは、大きな方向性、制度の骨格などを出せればと考えている。合意が得られたところは断定的に記述し、合意が得られていない部分については、それが分かる形で記述する」との方針を示した。前述のスケジュールでは、「2013年度に第三者機関を設立」とある。中立的な第三者機関の運営に国が関与するか否かは未定だが、「中間まとめ」で設立自体に合意が得られれば、設立のための補助金が、8月末予定の2013年度概算要求に盛り込まれることが想定される。
研修プログラムごとに受入定員を設定
専門医養成数の管理・調整を通じた、医師の地域・診療科の偏在解消は、今回の専門医制度見直しの重要なポイント。6日の会議で厚労省はその具体案を、「地域医療の安定的確保について(たたき台)」という形で初めて提示した。
まず専門医の質の担保という観点から、経験すべき症例数などを設定するとともに、複数の医療機関(教育病院群)で研修プログラムを用意、そのプログラムを中立的第三者機関で評価する。教育病院群を設定するのは、様々な症例を経験するためには、一つの医療機関では完結できないという想定からだ。
その上で、教育病院群内の受入定員を、症例数、指導医の数などを踏まえながら、研修プログラムごとに設定する。各教育病院群の受入定員の設定状況を踏まえ、全国・都道府県レベルで、各診療領域(診療科)の専門医養成数を管理、調整するという流れになる。その際、人口、患者数、医師不足の状況、専門医の定着状況、病院の指導体制、地域の実情などを総合的に勘案する。また、教育病院群を、基幹病院と地域の協力病院から構成し、一定期間、地域(へき地を含む)の協力病院で専門医研修を行うことで、へき地等の医師確保につなげる。
いまだ「総合医」の呼称で意見対立
専門医養成数の管理・調整の手法や、中立的な第三者機関の設置・運営のあり方など、検討すべき課題は山積だ。ただし、6日の会議で一番議論になったのは、いわゆる総合医について。「中間まとめ」(案)では、「総合医または総合診療医は、専門医の一つとして基本領域に加えるべきである」と記載。
特に、「総合医」「総合診療医」「プライマリ・ケア医」「家庭医」などのうち、どの呼称を用いるか、また「かかりつけ医」との関係をどう考えるかが議論になった。
日本医師会常任理事の高杉敬久氏、小森貴氏は、地域のかかりつけ医を「総合医」とし、学会が認定する専門医を「総合診療医」として、両者の名前を分けるべきだと提案。国際医療福祉大学大学院長の金澤一郎氏も、「総合診療医」を支持、ただし、「かかりつけ医と総合医がイコールだというのは納得ができない。かかりつけ医は患者から見た言葉であり、総合医は提供する側の用語」とした。
高久座長は、「総合診療医は米国のホスピタリストに近い。一方、第一線で幅広く診るかかりつけ医は、総合医ではないか。学校医、産業医、地域住民に対する教育から、介護まで関係する。それが総合医ではないか」との考えを示した。聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「総合医」は、高久座長が指摘したように、「社会的な側面も含めて、幅広いアプローチをする医師」ととらえ、「病院総合医」などはその上に位置付けるべきだと指摘。
池田氏は、「最終的にはどちらかに決めなくてはいけないが、中間まとめでは、『総合医(総合診療医)』といった併記でもいいのではないか」と提案。日本専門医制評価・認定機構では、7月7日から、総合医に関するワーキング・グループを立ち上げるとした。そこで総合的に診る医師の役割を明らかにした上で、最終的に呼称を決めるべきというのが池田氏の考えだ。ワーキング・グループは、金澤氏が座長を務め、内科、小児科、外科、救急の各学会のほか、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会、日本医師会、日本専門医制評価・認定機構の各代表者から構成する(『総合医、19番目の基本領域に追加』※1)を参照)。
※1)http://www.m3.com/iryoIshin/article/154558/
※2)http://www.m3.com/iryoIshin/article/153937/
質の担保、医師の地域・診療科偏在解消が目的
2012年7月6日 橋本佳子(m3.com編集長)
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7月6日の「専門医の在り方に関する検討会」(座長:高久史麿日本医学会会長)の第9回会議で、厚生労働省は「中間まとめ」(案)を公表した。
現行の学会認定の専門医制度から、中立的な第三者機関が認定する制度への変更のほか、現在の18の基本領域の上に、サブスペシャリティの専門医を取得する二階建ての仕組みとし、その基本領域の一つとして、「総合医」(または総合診療医)の追加を提言したことが特徴。さらに医師の地域および診療科偏在の解消に向け、全国と都道府県レベルで、各診療領域の専門医の養成数を管理・調整する方針を打ち出したことも、注目点だ。
これらの考え方は、日本専門医制評価・認定機構がこれまで検討してきた路線と一致している(『今の専門医制度は玉石混交』を参照※2)。
厚労省は、今後の検討スケジュールも提示。2012年度後半に専門医認定や中立的な第三者機関のあり方などについて検討。2013年度に第三者機関を設立し、各領域の基準作成、研修プログラムの設定、2014年度に研修プログラムの定員設定後、専門医研修プログラム希望者の募集を開始、2015年度に後期研修を開始する医師から、新専門医制度を適用する方針。
日本専門医制評価・認定機構理事長の池田氏は、「今検討しているのは、10年、20年後を見据えた制度であり、2015年度に新しく研修を始め、新たに専門医を取得する若い医師を対象にした制度。既に専門医を取得した医師については、別に検討しなければいけない。専門医の更新の際に新しい制度に移行するなど、幾つかの方法が考えられる」と説明。
厚労省は次回8月の会議で、「中間まとめ」を確定する予定。厚労省医政局医事課長の田原克志氏は、「中間まとめでは、大きな方向性、制度の骨格などを出せればと考えている。合意が得られたところは断定的に記述し、合意が得られていない部分については、それが分かる形で記述する」との方針を示した。前述のスケジュールでは、「2013年度に第三者機関を設立」とある。中立的な第三者機関の運営に国が関与するか否かは未定だが、「中間まとめ」で設立自体に合意が得られれば、設立のための補助金が、8月末予定の2013年度概算要求に盛り込まれることが想定される。
研修プログラムごとに受入定員を設定
専門医養成数の管理・調整を通じた、医師の地域・診療科の偏在解消は、今回の専門医制度見直しの重要なポイント。6日の会議で厚労省はその具体案を、「地域医療の安定的確保について(たたき台)」という形で初めて提示した。
まず専門医の質の担保という観点から、経験すべき症例数などを設定するとともに、複数の医療機関(教育病院群)で研修プログラムを用意、そのプログラムを中立的第三者機関で評価する。教育病院群を設定するのは、様々な症例を経験するためには、一つの医療機関では完結できないという想定からだ。
その上で、教育病院群内の受入定員を、症例数、指導医の数などを踏まえながら、研修プログラムごとに設定する。各教育病院群の受入定員の設定状況を踏まえ、全国・都道府県レベルで、各診療領域(診療科)の専門医養成数を管理、調整するという流れになる。その際、人口、患者数、医師不足の状況、専門医の定着状況、病院の指導体制、地域の実情などを総合的に勘案する。また、教育病院群を、基幹病院と地域の協力病院から構成し、一定期間、地域(へき地を含む)の協力病院で専門医研修を行うことで、へき地等の医師確保につなげる。
いまだ「総合医」の呼称で意見対立
専門医養成数の管理・調整の手法や、中立的な第三者機関の設置・運営のあり方など、検討すべき課題は山積だ。ただし、6日の会議で一番議論になったのは、いわゆる総合医について。「中間まとめ」(案)では、「総合医または総合診療医は、専門医の一つとして基本領域に加えるべきである」と記載。
特に、「総合医」「総合診療医」「プライマリ・ケア医」「家庭医」などのうち、どの呼称を用いるか、また「かかりつけ医」との関係をどう考えるかが議論になった。
日本医師会常任理事の高杉敬久氏、小森貴氏は、地域のかかりつけ医を「総合医」とし、学会が認定する専門医を「総合診療医」として、両者の名前を分けるべきだと提案。国際医療福祉大学大学院長の金澤一郎氏も、「総合診療医」を支持、ただし、「かかりつけ医と総合医がイコールだというのは納得ができない。かかりつけ医は患者から見た言葉であり、総合医は提供する側の用語」とした。
高久座長は、「総合診療医は米国のホスピタリストに近い。一方、第一線で幅広く診るかかりつけ医は、総合医ではないか。学校医、産業医、地域住民に対する教育から、介護まで関係する。それが総合医ではないか」との考えを示した。聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「総合医」は、高久座長が指摘したように、「社会的な側面も含めて、幅広いアプローチをする医師」ととらえ、「病院総合医」などはその上に位置付けるべきだと指摘。
池田氏は、「最終的にはどちらかに決めなくてはいけないが、中間まとめでは、『総合医(総合診療医)』といった併記でもいいのではないか」と提案。日本専門医制評価・認定機構では、7月7日から、総合医に関するワーキング・グループを立ち上げるとした。そこで総合的に診る医師の役割を明らかにした上で、最終的に呼称を決めるべきというのが池田氏の考えだ。ワーキング・グループは、金澤氏が座長を務め、内科、小児科、外科、救急の各学会のほか、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会、日本医師会、日本専門医制評価・認定機構の各代表者から構成する(『総合医、19番目の基本領域に追加』※1)を参照)。
※1)http://www.m3.com/iryoIshin/article/154558/
※2)http://www.m3.com/iryoIshin/article/153937/