甘利明 経済・財政・金融政策調査会長に聞く
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【日本経済の再生 自立の精神を後押し】

政権奪還後、わが党が最重点、最優先で取り組む課題の筆頭はデフレ脱却と
日本経済の再生です。キーワードは「国内総生産(GDP)大国から国民総所得
(GNI)大国へ」「貿易立国プラス投資立国」。その意味するところは何か―。
甘利明経済・財政・金融政策調査会長に聞きました。

<国民総所得(GNI)>
国民や企業が一定期間に得た所得の総額。これまでの国内総生産(GDP)は
「国内」で生産された財・サービスの総額。これに海外での投資収益を加えたもの。

◇「貿易立国」「投資立国」の 相乗効果で成長を実現

―「貿易立国プラス投資立国」とはどのような意味ですか。

■甘利調査会長
これまでの経済政策がうまくいかなかったのは、これまでの経済モデルをもとに
対症療法を繰り返してきたからです。そこで成熟社会にふさわしい、わが国の新たな
経済成長のモデルとは何かを考えました。
それが、これまで日本を支えてきた「貿易立国」に加え、「海外への投資に海外の
成長を国内に呼び込む投資立国」の二つの成長エンジンの相乗効果によって日本を
成長させていくという戦略です。

―「貿易立国」から「投資立国」に目標を変えるという意味ではないのですね。

■甘利調査会長
「ものづくり」の旗を降ろすのではありません。また、単に金融収入だけを狙う
「投資」でもありません。ハイブリッド・エンジンのように、それぞれの長所を
生かし、短所を補い、わが国を豊かにしていこうというものです。
例えば、海外の優秀な企業をM&Aで日本企業の傘下にする。
そのことによってわが国の競争力を強化する。あるいは資源権益の確保につながる
ような海外投資を進める。将棋のように獲った駒を自分の戦力にしていくのです。
このような競争力と資本の好循環によって日本経済を成長させていきます。

―どんな政策が必要になりますか。

■甘利調査会長
国内の経済活動に着目した国内総生産だけではなく、GDPに海外から入ってくる
「投資収益」を加えた「国民総所得」という経済指標を軸に新たな政策体系を
構築していかなければなりません。
まず、海外投資がしやすくなる環境の整備です。現在は円高ですから、海外投資を
積極的に進めるチャンスということができます。
また、外貨調達がスムーズにできるようなシステムをつくっていかなければ
なりません。あるいは現在よりも深化した投資協定や、自由貿易協定(FTA)・
経済連携協定(EPA)の締結も促進していかなければなりません。
税制面でも減耗控除(鉱山事業で新たな鉱脈を探すための費用を税制上認める)
制度の改善や二重課税の廃止など海外投資促進のための税制の整備、
さらには研究開発減税、投資減税などの拡充が不可欠となってきます。

◇「強い日本」への設計図示す

―自民党が政権奪還すると、何が変わるのですか。

■甘利調査会長
自民党は次期総選挙で「強い日本」をつくるための設計図を提示します。
その筆頭が憲法改正草案です。強い外交、安全保障、強い国土、強い社会保障、
そして強い経済など。わが党ポスターのコピー「一人ひとりを強く、豊かに。」は、
そうした思いを表現したものです。

―民主党とわが党との政策的な違いはどこにあるのでしょう。

■甘利調査会長
パイを生み出し大きくしなければ多く分配はできません。
ところが民主党はその順番を間違え、短期的なバラマキに走ってしまいました。
それが生活保護の急増につながっています。
私は講演などで「社会を支える側を増やすのが自民党。社会に支えられる側を増やす
のが民主党」「自立の精神を後押しするのが自民党。依存の精神を広げていくのが
民主党」「分配から始めるのが民主党。創造から始めるのが自民党」と訴えています。
民主党政権誕生により日本経済は大きく回り道をしてしまいました。
早く再生への手立てを講じなければ、回復不可能な地点にまで行ってしまいかねない
と危惧しています。一日も早い政権奪還が必要です。

[機関誌『自由民主』2512号より転載]